2013年7月8日月曜日

ヘルスコミュニケーションにおけるソーシャルメディア


ヘルスコミュニケーションにおけるソーシャルメディアの有用性のメモです。
今回も文献からです。

A New Dimension of Health Care: Systematic Review of the Uses, Benefits, and Limitations of Social Media for Health Communication[1]

保健医療の分野でもソーシャルメディアに関する文献が欧米を中心に増えています(日本の文献は…)
そこで現状を理解するためにも一度システマティックレビューを読んで整理しときたいと思います。



以下、概要


ソーシャルメディアの利用は保健医療の現場を含み、世界中で増え続けている。

KaplanとHaenleinはソーシャルメディアを次のように定義する。

ソーシャルメディアとは、Web2.0の概念的、技術的基礎の上に構築されたインターネットアプリケーションの集合であり、ユーザー生成コンテンツの創造と交流を可能にするものである。

また、彼らはソーシャルメディアはメディア的要素と社会的要素の二つの構成要素に分類することができるとしている。
メディア的要素とは、どの程度対同時生のあるコミュニケーションを実施できるのか、どの程度曖昧性や不確実性を減らすのかということを含むものである。
社会的要素はGoffmanの自己呈示(self-presentation)に基づくものであり、人は交流の中で相手が自分に対して抱く印象をコントロールしようとする目的を持つというものである。

ソーシャルメディア(social media)とソーシャルネットワーク(social networking)は混同して使われることが多いが、実際には同じものではない。
ソーシャルメディアはメッセージの伝達を行うコミュニケーションチャンネルとして働き、ソーシャルネットワークは双方向で直接のコミュニケーションである。

個人的特性とソーシャルメディアの参加には関係性があることが認められている。
ジェンダーや年齢はその要因となりうる。

保健医療の場でのソーシャルメディアの利用はWHOのtwitter利用から医療現場まで多岐に渡る。

異なるソーシャルメディアプラットフォームの形態や機能の相違を探るために、Keitzmannらは “social media ecology”を提唱した。
これは様々なソーシャルメディアプラットフォームから構成され、保健医療提供などの組織に対して異なる影響をもたらす7つの構築ブロックからなるハニカム構造になっている。
構築ブロックは以下である。(ハニカム構造の詳しい説明はこちら

①同一性(identity):どの程度利用者が自分自身を顕にするか②会話(conversations):どの程度互いに交流するか③共有(sharing):どの程度コンテンツの交流するか④存在(presence):どの程度他者の利用を知っているか⑤関係性(relationships):どの程度互いに関わっているか⑥評判(reputation):どの程度他者の社会的地位やコンテンツについて把握しているか⑦集団(groups):どの程度コミュイティを形成しているか

このように、組織はソーシャルメディアの展望を認識し、理解した上でそれに適した戦略を立てる必要がある。同様に、 MangoldとFauldsは提供者とメッセージの消費者の関係性は変わってきていると強調した。このことは、オンラインヘルスコミュニケーションの妥当性と信頼性を維持するために提供者はある程度のコントロールを必要とするかもしれないということ示唆する。

現在、一般の人や患者、医療者や専門家におけるヘルスコミュニケーションに対するソーシャルメディアの利用やその利点、制限についての情報が不足している。
この論文の目的はその点と、先行研究に見られる現在のギャップを明らかにすることで今後の研究に指針を与えることである。これはソーシャルメディアがヘルスコミュニケーションの向上につながるかどうかを実証するためにも重要である。


PRISMAガイドラインに沿って98の文献を抽出した。
多くの研究はソーシャルメディアの中でもFacebookや、ブログ、Twitter、Youtubeの利用に関するものであり、トピックとしてはセクシュアルヘルスや糖尿病、インフルエンザ、メンタルヘルスがほとんどであった。

バイアスツール/質尺度の利用可能な方法論から、Downs and Black Instrumentが量的研究の質を評価するツールとして推奨されている。
質的研究に対する標準化された尺度は無いので、量的研究のみ(量と質のミックスを含む)評価した。
Downs and Black instrumentでは最高得点が32点になるが、本研究で対象となった研究の得点は3点から22点であった。全体的に得点が低かったのは、主に探索的研究と記述的研究が占め、介入研究が3つ、RCTが1つだったためである。
抽出した98の研究のうち40が量的、48が質的、10がミックスであった。


研究に見られるソーシャルメディア利用者は多岐にわたるが、年齢では11歳から34歳が多く報告されている。また、SNSは男性より女性が多く利用しているとする研究もある。
少数の研究が、ソーシャルメディアの利用者は所得が低いとしている。アメリカの研究では白人より黒人の方が利用していることを報告している。Chouらは人口集団は教育や人種/民族に関係なくソーシャルメディアにアクセスしていると結論づけている。


抽出した研究からヘルスコミュニケーションにおけるソーシャルメディア利用の主な7つ
・様々な症状に関する情報を提供すること
・医学的質問への答えを提供すること
・患者同士、患者と専門家の対話を促進すること
・患者の経験や意見に関するデータを集めること
・介入やヘルスプロモーション、健康教育に使われること
・スティグマを減らすこと
・オンライン相談を提供すること

ヘルスコミュニケーションにおけるソーシャルメディアに共通する(overarch)6つの利点
・他者との交流の増加
・より多く利用可能で、共有可能な自分に合った情報
・アクセシビリティの増加とアクセスの拡大
・ピア/社会的/情緒的サポート
・公衆衛生におけるサーベイランス
・健康政策への影響をもたらす可能性

ヘルスコミュニケーションにおけるソーシャルメディアの12の制限

・情報の信頼性の欠如
・情報の質の問題
・秘密性とプライバシーの欠如
・ネット上に個人情報を開示することへのリスク認識の不足
・不適切なアドバイスやコミュニケーションへのリスク
・情報過多
・自分の状況に合わせて適切に情報を利用できないこと
・特定のソーシャルメディアが他の物より行動変容により効果的かもしれない(?)
・健康に対する悪影響
・健康に対するリスク行動
・患者が専門家のもとへ訪れることを妨げるかもしれない
・専門家が患者との交流のために利用していないかもしれない

一般の人はソーシャルメディアを主に自分自身や、家族、友達のために利用し、健康問題に対する情報を得たり共有しようとする。患者は自身の経験を共有したり、オンライン相談に使うことができる。専門家の中には患者に関するデータを得たり、オンライン相談に応じるために利用する人もいる。
しかしながら、現段階での利用には制限がある。カナダの保健医療に関する女性専門家はWeb2.0が知識提供に有効的だろうと見ているが、扱う時間や技術的なスキル不足のために制限があるとしている。自己呈示や同時生の対面あるコミュニケーションへの親密性を向上させる今後の研究が専門家と患者のコミュニケーションを向上させるだろう。
他の研究では、オンラインの議論における専門家の知識共有行動を理解するためにソーシャルネットワーク分析を用いて、専門職間、組織間のつながりが強いことを明らかにした。
今後の技術発展は将来の保健医療の場でソーシャルメディアを利用する機会を増やす。だが、保健医療提供におけるソーシャルメディア利用の用途を最大にするためのトレーニングを患者にも提供者にも必要とする。


ヘルスコミュニケーションにおけるソーシャルメディアの役割を決めるためにも、より大きなサンプルサイズ、剛健な方法論が必要とされる。
ヘルスコミュニケーションに対するソーシャルメディアの研究の不足点と指針
・特定の集団におけるソーシャルメディアの影響
⇒十分なサンプルサイズを用いての評価が必要
・異なるソーシャルメディアアプリケーションの相対的な有効性
RCTを用いての評価が必要
・ソーシャルメディアの持つ有効性への長期的な影響
⇒縦断研究を用いての評価が必要
・ソーシャルメディア利用によるヘルスコミュニケーションの質と信頼性を観察し、
高めるために一番適した潜在的なメカニズム
  ⇒実際にソーシャルメディアを用いての調査が必要
・オンラインの情報共有リスク、秘密性とプライバシーに対する影響、秘密性とプラ
イバシーを維持したまま利用者を効果的に教育するために最も適したメカニズム
  ⇒メカニズムの発展と相まってリスクと影響の調査が必要
・患者と専門家の関係を効果的に支えるソーシャルメディアの潜在的可能性
⇒支えるためにどのように利用できるかを評価することが必要
・コミュニケーションを高めるためのピアトゥーピアサポートの影響

⇒ピアサポートの影響を評価することが必要


以上、こんな内容でしたが、、、訳が全然できません(苦笑)。
英語の勉強もしなければなりません。
間違っている、または分かりにくい場所については誰か教えていただけるとありがたいです。
あと、単に訳すよりはもう少し、重要と感じたとこにしぼって書いてみた方が振り返った時に分かりやすいかもしれません。

この文献からも、データベースで検索するだけでも分かるのですが、やはりRCTのような介入研究は多くありません。なぜでしょう。まだまだ新しい領域(実際に、今回レビューした文献もほとんどがここ2年間のものだったと記述がある)ので研究デザインなどが難しいのでしょうか。

保健医療でのソーシャルメディアの利用による知識共有、様々なものの見方、自分に必要な適切な情報の探し方、選択する力(まとめて言えばヘルスリテラシー?)が得られると感じていますが、その理想の仮説の前に(それを検証するためにも)もっと明らかにしなければいけないことが多くありそう、、、
とかいろいろ考えてるうちに煮詰まってきました(笑)。

システマティックレビューを読んで整理するはずだったんですが、まだまだ実際にどのような研究が行われているかを知らないので考えが現実的に進まないのでしょう。
やはり、この夏休みはどんどん論文を読んでいきます。



[1]Moorhead SA, Hazlett DE, Harrison L, Carroll JK, Irwin A, Hoving C

A New Dimension of Health Care: Systematic Review of the Uses, Benefits, and Limitations of Social Media for Health Communication. J Med Internet Res 2013 Apr; 15(4):e85

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