2013年6月25日火曜日

Health2.0 and Medicine2.0



Health2.0とMedicine2.0の定義についてのメモです。

今週の看護情報学特論でこのHealth2.0とMedicine2.0についてプレゼンをしようと考えていたので、

以前、流し読みをしたDefinition of Health 2.0 and Medicine 2.0: A Systematic Review[1]を改めて読んでみました。

ただし、この領域は成長が著しく最新の情報を得ていくためにはもっと英語圏のブログを読み込む必要がありそうです。



以下、概要


2004年にティム・オライリーによってWeb2.0という概念を

ユーザー参加、開放性、ネットワーク効果によって特徴づけられる、より進歩した独特の
メディアである次世代インターネットを集合的に築く経済的、社会的、および技術的潮流の統合

として提唱した。

Web2.0の定義についても様々な見解があるが、Web1.0(第一世代インターネット)とこのWeb2.0の主な違いは、Web1.0の情報の流れが一方通行だったのに対し、Web2.0ではユーザー自身が情報を発せられるようになり、相互作用的になったところにある。
ただし、Web2.0がHTML言語のように既存の技術を基にしていることから、新世代インターネットではないという人もいる。


このWeb2.0の技術が保健医療の現場に持ち込まれるとHealth2.0が使われ、同様にmedicineとWeb2.0を掛け合わせたMedicine2.0を使う人もいる。
このHealth2.0やMedicine2.0には、例えばPatientslikemeやHello Healthがある。
たいていHealth2.0とMedicine2.0には実際には大きな違いは無いとされる。



この領域における今後の取り組みや研究のために定義を明らかにしようとしたところ、46の記述からよく挙げられる7つの話題を取り上げた。

その7つが以下である。

・患者と消費者 Patients and Consumers
・Web2.0/Technology
・医療者、専門家 Proffesionals
・ソーシャルネットワーク Social Netwoking
・保健医療提供の変革 Change of Health Care
・協同 Collaboration
・健康医療情報またはコンテンツ Health information or Content



Web2.0という言葉は頻繁に取り上げられ、33人の著者が定義の中で直接その言葉を用いており、Web2.0という考えを受容していることが分かる。一方、他の著者はWeb2.0は全く存在しないと述べている。Web2.0に対する著者の解釈はHealth2.0/Medicine2.0の定義に深く関わっている。

研究者たちはWeb2.0の意味を広く2つに分けた。
一つ目に、Web2.0とは技術発展の統合もしくは“mashing(マッシュアップのことか?)”である。
二つ目に、Web2.0とは人々にエンパワメントをもたらすユーザー生成コンテンツを持った、相互作用が重要となる新世代インターネットである。この二つ目の解釈においては技術やmashingはツールに過ぎず、Web2.0とは技術以上のことを意味する。
この二つの意味がHealth2.0/Medicine2.0に異なる意味をもたらす。
多くの定義が保健医療の提供における技術発展について言及する一方で、他の定義はHealth2.0/Medicine2.0とは保健医療の提供における新世代であると述べる。また、多くの定義が患者と医療者の関係に焦点を当てている。

Health2.0/Medicine2.0によって患者はソーシャルネットワークの利用や医療情報へのアクセスによって医療の場における役割を変えながら医療者と協同するとされている。


最後に、Health2.0/Medicine2.0は保健医療提供を変えると考えられている。だがEngelenによれば保健医療提供の根本的な変革はいまだ起きていない。



一般的にHealth2.0/Medicine2.0の定義は定義する者自身の視点によって行われており、このことは異なるステークホルダーのアジェンダによって定義は影響を受けうるということである。

それゆえ、今後の研究者は全てのステークホルダーを取り込み、それによって可能な見方や視点を含むことが重要である。




以上、こんな内容でした。

Limitationsの所では、今回の研究にあたってインターネット上の灰色文献gray literatureを多く扱ったところ指摘していましたが、そこに触れずしてHealth2.0/Medicine2.0について考察することはまず不可能でしょう。
厳しい審査がある科学的な論文と違って、ブログにはその人のモラルに頼る以上の制約が無いのは事実ですが、今や知見に富んだブログも多く存在しています。
結局論文にしても、ブログにしてもクリティカルに読むということに変わりありません。
Health2.0による患者、消費者の自主(積極)的な保健医療への参加や関わり、また患者や消費者同士のつながりがヘルスリテラシーを向上させるようなものになるのか今後も追っていこうと思います。


[1]Belt THVD, Engelen LJLPG, Berben SAA, Schoonhoven L. Definition of Health 2.0 and Medicine 2.0: A Systematic Review. J Med Internet Res 2010;12(2):e18

2013年6月20日木曜日

看護情報学特論メモ

先週で看護情報学特論の先生による講義が終わり今日からは学生のプレゼンです。
先週までのとこを少し振り返ってみます。

●保健医療における三つのコミュニケーション

医療者-医療者
医療者-消費者
消費者-消費者

研究を行ううえでも自分がどこに関心があるのかをはっきりとさせる必要がある。
私は医療者-消費者、消費者-消費者か。

●意思決定について
・医療選択における意思決定支援が重要となってきているが、 
意思決定がうまくできた人は余後がよい。
意思決定支援の研究に関しては乳がんの研究が多くある。
その理由としては、数がおおいことや、急性のものに比べて時間がとれる、治療選択がある程度決まっているということがある。
・流行のアマゾンの1クリックで買い物できるというのは合理的意思決定が働いていない。
・リスクコミュニケーション
・ベイズ統計 事前確立をかける
・医療者はコミュニケーションにおいて上手く伝えるための鉄板方法があると思い込んでいたりするが、コミュニケーションは多様な人と多様な人の掛け合わせである。
・講義の一番前でうなずいている人ほど学習理解が伴っていなかったりするのは、批判的な見方や考え方が欠けているから()
・エビデンスは個別性に欠けているのか?
エビデンスは多数から出てくるものであるが、そのエビデンスを使って個人が考えることができるものである。その意味ではエビデンスとは個別性適応するものと言える。
・ランダムに起こる事象からたまたま何かが続くとそれを信じてしまう。
例、1/2の確率のギャンブルを始めたら勝ち続けた人は自分が強いと考えがち。実際には単なるビギナーズラック。実証するにはexcel関数で0、1をランダムに出すと分かりやすい。
・可能性のある選択肢を悪いとこばかり見てつぶさないのが大事
メリット、デメリットを挙げる
この場合これがいいとか悪いとか考えない
・生存率は99%という場合と、死亡率は1%という場合では、意志決定の結果が違ってくる可能性
→どちらも言うべきだという考えがある
・社会調査での質問方法など
例、あなたは安倍内閣を支持しますか、支持しませんか。


●Social media
・キュレーションとは?
自分に合った情報を取り出すことができる。情報と人を結び、さらに人と人のつながりをも生む。キュレーションのサービスとしてはGunosyなどがある。Content Management System。
facebookなどはその人がどのような過去を持つかがわかる。つまり相手の文化を知ることができる。
・アーカイブスの重要性。民主制。今後私たちが死んだ後のfacbookはどう残るのだろうか。
現在、死んだ後にメッセージを送るソーシャルメディアも出ている。
lay knowledge
lay epidemiology
・情報からものをみることで、思考様式が変わっていくこと「情報学的転回」(西垣,2006
1患者1カルテ。電子カルテは患者に見えることが必要。他職種の人が自分のカルテに記述を行っているのを見えることが患者の満足につながる=患者のための電子カルテ化。現在は医療者のための電子化。海外では患者ポータルなどがある。
・ICTを使った障がい者からチャレンジドへ!プロップステーション



●ヘルスリテラシー、SOCなど
・ヘルスリテラシーの向上方法はあるのか?
ほとんどエビデンスは無い。唯一言えるのが参加型プログラム。
Nutbeam,2000の論文は読まれてるランキングがずっと1
・アドボカシー→代弁する(ここに情報を得られず、健康になれない人がいますよ!)
・相対的貧困 所得50%以下の家庭 日本では15%位 先進国の中では高め
この15%のうち50%は母子家庭が占めている
・健康生成論  疾病 ←リスクファクター サルタリーファクター→ 健康
・Sense of coherence 首尾一貫感覚
1)わかる 2)できる 3)やるぞ (蛯名先生)
distress eustress 
・ラザルスのストレス評価 1)ストレスかどうか2)対処可能か3)意味づけ
・SOCを上げるような介入=病気になってよかったといようなポジティブな考えを看護介入において成し遂げる
・Benefit finding 
RCTを行い一方は毎日普通に日記つけてもらう、もう一方は毎日何かいいことを見つけて書いてもらう。後者のほうが回復は早いという研究。
・ヘルスリテラシーは社会関係資本ソーシャルキャピタルの資源と言われている。
・健康や疾病という刺激に対してどう反応するか⇒学習に通ずる。


まだまだありますが、今から特論が始まるのでざっとメモです。
また整理して書ければいいと思います。
このスライドは研究室のページにあります(中山研究室)。






2013年6月18日火曜日

科研費会議

昨日は科研費の会議でした。
会議ではWebサイト「健康を決める力」に追加するべき海外のヘルスリテラシーに関連したコンテンツのリストアップとその内容の整理を行いました。

私もヘルスリテラシーに関する多くのコンテンツをを見ましたがとても勉強になりました。
加えて、他の方々が同様にいろんなコンテンツについて報告してくださるので、さらに勉強になりました。世の中にはこんなにお得な会議があったのですね(笑)

これから「健康を決める力」をさらにイケてるサイトにするために私も一助となれるように頑張りたいと思います。
そしてその中で自分の研究に使えそうなものはどんどん取り込んでいきます。

それにしてもアメリカのWebサイトは非常に充実しているなあと改めて感じました。
ヘルスリテラシーという言葉一つ見ても(輸入した言葉ではあるものの)、向こうでは様々な形で世に発信されています。
日本ではいまだに一部の研究者の中の言葉のように思えます。
もちろん重要なことは言葉の中身であり、形骸化してしまっては意味が無いのですが、
やはり言葉があることで意識化することが簡単になります。

また、向こうでは実践が心がけられている所が素敵だと思います。
「ヘルスリテラシーってのがありますよ!」という紹介だけで終わることなく、「このツールをを使って実践してみましょう!」という働きかけがあります。
紹介だけで終わってしまえば、私たち一般の消費者も医療提供者も自分が何をする必要があるのか分かりません。
私自身もそうだったりするのですが、何かを紹介した時にそれに満足してしまい、具体的な話がなおざりにされることはよく見かけます。



といってもヘルスリテラシーに関する日本オリジナルの研究が少ないのも事実です。
これからの研究に期待していきたいと思います。
そして私自身も修士とは言え、やるからには自信を持って報告できるように頑張りたいと思います。


今月は看護情報学研究室の研究会のブログも担当して書いてます。
研究会にご興味のある方はぜひご覧下さい。




2013年6月8日土曜日

eヘルスリテラシー

6月5日のゼミにおいて研究発表を行いました。


今後研究を行って行くにあたり、自分の興味はどう形成されてきたのか。
学部時代の関心領域として、行動変容、健康情報、ヘルスコミュニケーション、ヘルスリテラシー、ソーシャルネットワークなどがあり、修士を考える頃からICT(特にソーシャルメディア)が出てくる。
修士になってからは、行動変容というより意思決定、ソーシャルラーニング、情報の提供ではなく共有、加えて学習理論も重要になる。

一方的な専門家から消費者への情報提供ではなく、ソーシャルメディアによる人のつながりを利用した双方的な情報共有。
単に情報提供を変えるのではなく、私たち市民の学びの促進、ヘルスリテラシーの向上。
ではヘルスリテラシーを向上させるには?
消費者のオンラインでの学びの可能性。ソーシャルラーニング。


スライド共有サイトであるSlideShareにアップロードされたスライドSocial Media for Social Learning on Health and Medicine: eHealth Literacy and Navigating the Web for Wellbeing を見て面白いなと思いました。ヘルスリテラシーのことはよく耳にしますが、eヘルスリテラシーなるものが出ていたとは知らずまだまだ無知です。
そこで今回はこのスライド作成者であり、eヘルスリテラシーを提唱したカナダのトロント大学の先生であるCameron D. Normanさんの論文を読んだものを発表しました。

 
eHealth Literacy: Essential Skills for Consumer Health in a Networked World[1]           eヘルスリテラシーとは電子媒体(インターネット)から健康情報を探し出し、内容を理解し、評価して、それを健康課題へ取り組み解決するために用いる能力である。
eヘルスリテラシーは伝統的リテラシー、情報リテラシー、メディアリテラシー、ヘルスリテラシー、コンピューターリテラシー、科学リテラシーの6つからなる。

これをNormanはLily Modelとして花に例えている。
6つのリテラシーが花びらで、eヘルスリテラシーが雌しべにあたる。

また、伝統的リテラシー、情報リテラシー、メディアリテラシーの3つを広く情報の質を評価する分析的モデル、ヘルスリテラシー、コンピューターリテラシー、科学リテラシーの3つを状況に応じた特異的モデルとしている。

 
eHEALS: The eHealth Literacy Scale[2]
eヘルスリテラシーを測る尺度としてeHEALSを開発し、その妥当性と信頼性を測定する。
対象はカナダの学生664名で、自記式質問紙調査による縦断的調査を実施。
結果は、因子分析によって1因子構造であること、内的整合性は妥当な値であること、再テスト法による尺度得点の相関係数は適当な値が得られた。



eHealth Literacy2.0: Problems and Opportunities With an Evolving Concept[3]
eHEALSへの妥当性が懸念されている。
eHEALSはバンデューラの自己効力感に基づいて開発された自記式ツールなので、もっと客観性のある尺度が必要とされる。
eHEALSが開発されたのは2006年次であり、当時はソーシャルメディアのようなWeb2.0的な考えが浸透していなかったので、このeHEALSはWeb1.0的な能力しか測れていない。


実はこの点はすでに当時早稲田の博士課程であった光武さんらによって明らかにされていました(文献:eヘルスリテラシーの概念整理と関連研究の動向)
光武さんらはeHEALSの日本語版開発も行っており大変勉強になりました。


ゼミでのディスカッションとしては、自記式ツールではない尺度の開発とはどのようなものがあるのかということが出ました。
バイオロジーの領域では客観的なデータを得られやすいが、ヘルスリテラシーなど人の能力?といったところの客観性を測るのは難しいのではないのか。
しかし、先生からのご指摘があったように、テストを実際にするというのが非常にわかりやすい例です。例えば、ネット上で実際に情報を見つけてもらうといったテストです。こういったヘルスリテラシーに関するテストについてもどのようなものがあるのか調べてみるのは面白そうです。

またヘルスリテラシーとeヘルスリテラシーの関係性も話題にあがりました。
eヘルスリテラシーはヘルスリテラシーに含まれているのではないのか。
あえて分けることの利点はどこにあるのか。
ヘルスリテラシーとeヘルスリテラシーの分けることへのメリットとしては、ヘルスリテラシーの概念の膨張を防ぐことができると言えます。
何でもかんでもヘルスリテラシーという言葉で説明しようとすれば、結局ヘルスリテラシーは何なのかあいまいになり、広大な概念を測定できるのかという問題も起こってくるかもしれません。

加えて、eヘルスリテラシーの開発された当時の時代背景というのも考慮して考える必要があると言えます。
ヘルスリテラシーの第一人者とも言えるNutbeam(2000年からHealth promotion internationalにおいてHealth literacy forumの開設[4])がヘルスリテラシーについて取り上げたあと、インターネットはどんどん発展しました。
そこでインターネットにおけるヘルスリテラシーの重要性に着目したのがNormanです。それでも当時はまだソーシャルメディアのようなWeb2.0的なところは広く一般に普及はしていませんでした。
そのためeHEALSの開発というのは重要な取り組みであったと思われます。
だが、今、それをそのまま使えるかと言えばそうではありません。
ICTの進歩は驚異的な速さで今もなお進んでいます。
つまりICTに関わる能力を測る尺度というのはそれにともなって常に発展が求められるということです。

この尺度は現代にあってない。
だから新しい尺度が必要である。
これは事実でしょう。しかし同時に、過去に開発された尺度から学ぶことは非常に大きいのも事実です。

まさに温故知新です。


文献
[1] Norman CD, Skinner H. eHealth Literacy: Essential Skills for Consumer Health in a Networked World. J Med Internet Res 2006a; 8: e9.
[2] Norman CD, Skinner H. eHEALS: The eHealth Literacy Scale. J Med Internet Res 2006b; 8: e27
[3] Norman CD. eHealth literacy 2.0: Problems and Opportunities With an Evolving Concept. J Med Internet Res 2011; 13: e125.
[4] Nutbeam, D. / Kickbusch, I. “Advancing health literacy : a global challenge for the 21st century” , Health Promotion International,15(3), 183-184, 2000