2014年6月10日火曜日

DeNAライフサイエンスのサイトからセルフメディケーションを考える

約半年ぶりに書きます。だいぶさぼってしまいました。
学んだことはまたどんどん書いていきたいと思います。

あまりこのブログではHealth2.0について取り上げてこなかったのですが、
最近、健康・医療分野とITはかなりホットな話題なのでもう少し取り上げようと思っています。
アップルのiOS 8やiWatchでもヘルスケア・フィットネス機能が目玉になると言われていますし非常に楽しみです。実際にそれがどの程度うまくいくのかはgoogle healthの例もありますしまだわかりません。

Health2.0に関連して、先日気になったニュースがこちらです。

http://dena.com/press/2014/06/dena-mycode.php

DeNAが遺伝子検査サービス「MYCODE(マイコード)」を始めるようです。
そういえば前にそんなニュースあったなーという気がしたので検索してみたら今年の1月に発表していました。ちなみにYahooなども参入している分野です。
遺伝子検査サービス自体は最近増えつつあるので目新しさは無いのですが、
DeNAやYahooというネームバリューのある企業の競合がどれほど消費者に影響をもたらすのかが気になるところです。
また、アメリカの遺伝子検査サービス提供会社の代表格である23andmeが去年FDAによってサービスの停止を言われたように、扱う情報や倫理などが問題にもなりやすい分野です。日本でも出生前診断やダイエットに関する遺伝子検査などは普通に行われていますが、本格的に病気を発見するようなサービスはどうなのでしょうか。

ところで、このマイコードを始めるDeNA(正確にはDeNAライフサイエンス)が目指すものの一つに、「自分で健康をマネジメントする社会へ」というのをサイトで紹介しています。以下はDeNAライフサイエンスのサイト(https://mycode.jp/selfmedication.html)からの抜粋です。

医療・社会保障問題を解決する上で鍵となる「Healthケア」を実現し、より効果的に推進していくために、私たちは個人が自分自身で健康のハンドルを握る「セルフメディケ―ション」の考え方を広げていきたいと思います。「セルフメディケ―ション」とは個人が自分自身についての健康情報を知り、専門的な医療情報や健康維持・増進のために役立つ情報を知り、その上で、病気にならないための予防法や健康向上のための行動を自ら起こしていく活動のことであり、私たちは個人の健康ための「セルフメディケ―ション」を具現化し、推進・サポートするサービスを幅広く提供したいと考えています。 

このセルフメディケーションはとても大事だと思います。情報やものにあふれる現在の社会で自分の健康にとって必要な情報や行動は自分で選択していかなければなりません。この意味においてヘルスリテラシーと似ているところがあります。

ただし、この「セルフ」という言葉があまりに強調されると少し抵抗もあります。というのも、現在進めている研究で「健康の社会的決定要因」と呼ばれる、健康に関わっている社会的な要因(所得であったり、住んでいる環境であったり、職場環境であったりと様々なものがあります。)について勉強しているからです。

例えばもし、Aという地域に暮らしている人の健康寿命(健康に生活できる時間)とBという地域に暮らしている人の健康寿命に20年もの差があったとしたら、その差の背景には公衆衛生環境の整備の違いや、社会格差の存在などが考えられます。この違いがあるなかでいくら自分を律しても(そもそもBの地域では律することさえも難しいかもしれませんが)なかなか健康寿命の差は縮まらないでしょう。
これは日本の中では極端な例かもしれませんが、世界的には普通にあることだと思います。

このように健康とは社会的な影響を強く受けているものですので、自分の体調は自分で管理しつつ、個人では対処できない問題については、国や自治体に健康を保障する政策や環境の改善を要求することも必要ということです。ちなみにこの後半部分を批判的ヘルスリテラシーと呼んだりしています。

セルフメディケーションという言葉の解釈の問題でもあるかもしれませんが、何でもかんでも健康を個人の責任にしてしまうのはやはり望ましくないというのが思うところです。特に、医療費が増加しているからセルフメディケーションが大事というのはどうかと思います。社会的な問題が急に個人のせいにされたような気がしてしまいます。
健康にとってセルフメディケーションが大事というのであれば納得できます。
何にせよ、自分の置かれている状況に応じてセルフメディケーションや批判的ヘルスリテラシーを実践していく必要はあるのかもしれません。