2013年7月30日火曜日

ヘルスリテラシ―におけるソーシャルメディア

WebMedCentralで公表されていたブリーフレポートのメモです。
ソーシャルメディアとヘルスリテラシーという観点からの話で面白そうだったので読んでみました。

On Social Media in Health Literacy[1]



ソーシャルメディアは利用者が適切な意思決定を行うのに必要な健康情報やサービスの(1)収集と(2)処理、理解する能力の向上に潜在的可能性がある。
しかしそれは特にその二つの能力の内の一つ目、健康情報を得る/アクセスする能力であり、それはソーシャルメディアによってすぐに向上されうる。二つ目の健康情報を処理し理解する能力はウェブ中に広がる様々な要因による。つまり、コンテンツの質や健康情報の提示とその情報の標的集団のヘルスリテラシーレベルとニーズにどの程度合っているかということである。

バイラルソーシャルマーケティングはソーシャルメディアの強みであり、そして健康教育やヘルスプロモーション、社会事業で重要な役割を果たす (Gosselin & Poitras 2008) 。
例えば、バイラルマーケティングやソーシャルメディアはトルコでのコンドーム利用の促進に成功した(Purdy, 2011)。


2011年のONS(Office for National Statistics)レポートによればイギリスでのモバイルインターネット利用はすでにおよそ50%である。
スマートフォンやそのアプリは急速に、そして根本的にヘルスケア、特に慢性疾患を持った患者のケアを変えた (Kamel, 2011)(Leslie, 2011)(Kamel, 2011)


ソーシャルメディア戦略はソーシャルメディアテクノロジーをエビデンスのあるオンライン資源につなげること、新しいアプリケーションを適切な利用集団に用いること、ヘルスコミュニケーションの最適な実践を取り入れること、ヘルスリテラシーの問題を関連のあるソーシャルメディアのコンテンツで取り組むこと (Kamel, 2005)(Metzger & Flanagin, 2011)(Chris et al., 2011) 。


今日、問題はもはやソーシャルメディアをヘルスリテラシーのために利用するかどうかではない。
むしろ問題はどのソーシャルメディアを利用するか、 どうしたら最適に行えるかである。



ブリーフレポートということで内容はあっさりしてましたがソーシャルメディアによる健康情報の収集能力と、処理し理解する能力の向上に関して2つに分けている所が、ついついヘルスリテラシーという一つの能力として考えがちな私には参考になりました。
次こそは原著を読まなければ。



[1]:Kamel Boulos M N. On Social Media in Health Literacy . WebmedCentral HEALTH INFORMATICS 2012;3(1):WMC002936

ヘルスケアがソーシャルメディアを迎える

CALIFORNIA HEALTHCARE FOUNDATIONから2008年に公表されたレポート
The Wisdom of Patients: Health Care Meets Online Social Media[1]
のメモです。


論文ではなくレポートですが、2008年という日本でもようやくソーシャルメディアが流行り始めた時のレポートで、結論のところではWeb3.0についても言及していたことから気になって読んでみました。



Web2.0は一般の人がオンラインコンテンツを創造することを可能にした。
ユーザー生成コンテンツ(UCC)はソーシャルネットワークによって支えられる様々な活動があり、写真の共有や、ビデオのアップロード、音楽のダウンロード、ブログなどがある。消費者は日々の生活で娯楽や教育、財政経営のために使っており、ソーシャルメディアと呼ばれるこの技術は消費者が健康情報やサポートのために使うプラットフォームでもある。
インターネット上のソーシャルメディアは保健医療の場の消費者と医療提供者にempowering、engaging,、educatingを行っている。
この流れ(movement)はhealth2.0として知られており、
ソーシャルソフトウェアの利用と、患者やその保健医療提供者、医療専門家、保健医療分野の利害関係者間のコラボレーションを促進する能力
と定義できる。

ソーシャルネットワーク内に患者が多ければ多いほど、彼らは多くの価値を創り出す。これはポジティブネットワーク外部性(positive network effect)という現象である。集団的知性の利用(harnessing collective intelligence)と呼ぶ人もいる。
James Surowieckiは彼の著書、「Wisdom of Crowds」の中で、“集団とは驚くべきほど知的で、たいていその集団の中で最も賢い人々より賢い。”と述べた。

PatientsLikeMeの例


2008年のEdelman Trust Barometerによると人は自分のような人を権威者より信頼する傾向があり、さらにソーシャルネットワーク―企業についての意見を友達、同僚、広いコミュニティで共有する人々―はより健康志向が高い。


Jude O'Reilleyによれば現在の消費者生成コンテンツ(CGC)は意思決定支援のためにきちんと整理されていない。
“人々は実用的な情報を得るために広大なメッセージボードから採掘している。その人達が自分でせざるを得ないことは二つの困難な課題を解決することである:一つ目にこの人は私と同じような人なのか、;二つ目にこの人は信頼できるのか。信頼を構築する作業は非常に骨が折れるものである。”


保健医療におけるソーシャルメディアへの批判は個人によって作られたコンテンツは悪影響や、死さえひきおこしうると警告する。
Envision SolutionsのFard Johnmarはこれに対して“コミュニティはとても活動的で、自己修正をする多くのメンバーがいる。間違った情報は追い出される。ちょうどウィキペディアのように、間違った情報は長いこと残りはしない”と反論した。



Yahoo!HealthのBonnie Beckerによれば“プロシューマー(Purosumer)”とは健康情報を積極的に検索する消費者(Consumer)であるという。
Beckerは“消費者はオンラインの健康情報のソースとして単に一つのソースだけを使うことはない。人は平均して5つの情報ソースを検索に利用する。人はYahoo!Healthを訪れるだけではなく、MayoやWebMD、ブログサイトを訪れる。人は全てのWebに即して情報を再確認するのである。”と言う。



なぜ消費者はソーシャルメディアを利用するのか
情緒的サポートは重要であるが、薬や治療に関しての他者の声を聴くこと、他の人の知識や経験を見ること、状態をどのように管理するかを学ぶことのほうがより重要となっている。
出典Jupiter Research, Online Health: Assessing the risks and opportunity of social and one-to-one media, 2007.



保健医療の場でソーシャルメディアを利用する人はどれ位の個人的な情報が共有され、その情報を共有することによる個人的な見返りはなんであるのかに関してよく学んだ意思決定が求められる。



インターネットがWeb2.0に発達したように、専門家がWeb3.0を思い描くことは自然であり、それはセマンティックウェブとして知られている。セマンティックウェブはオンラインで利用できる情報やサービスが持つ意味の定義が加えられたワールドワイドウェブの拡張である。それは人の要求を理解し、満たし、機械がコンテンツを使うことを可能にする。

ワールドワイドウェブを開発し、その用語を造った開発者Tim Berners-Leeはその重要性を語った。“今日のほとんどのウェブコンテンツは人が読むように設計されていて、コンピュータープログラムが有効的に操作できるようにはなっていない。コンピューターはレイアウトや日常的な処理のためにウェブページをうまく分析することができる。だが一般的に、コンピューターには意味を処理するための信頼できる方法が無い。”
コンピューターは検索用語の意味を知らない。
セマンティックウェブの実現は全ての人に求めているものにより近い情報の検索をもたらしうる。


少し古いところもありましたが、2008年の段階ですでにここまでまとめらているということに驚きです。

[1]The Wisdom of Patients: Health Care Meets Online Social Media
Jane Sarasohn-Kahn, THINK-Health

CALIFORNIA HEALTHCARE FOUNDATION
レポートはこちら

2013年7月25日木曜日

ヘルスコミュニケーションと新技術②

7月24日水曜日のゼミで輪読の担当をしました。
今回はそのご紹介です。

書籍
Health Communication in the 21st Century, Second edition


輪読箇所
Chapter7 New Technologies and Health Communication



New Technologies and Provider-Provider Communication
Email, Wireless/satellite Communication, and Electronic Records
・それぞれの特性
・ Electronic Medical Records  
Eder and Wise(2001)は保健医療分野のビジネス活動のおよそ75%が情報の入手の操作であり、そのほとんどが紙媒体であると見積もった。

Disadvantages of New Communication Technologies
・診察室でコンピューターを利用することがプロバイダーと患者のやり取りにどのような影響をもたらすかについてはあまり知られていないが、コンピューターを使って患者の情報を得ることは言語 的にも非言語的にも患者とのやり取りを減らす可能性がある。
・ ヘルスコミュニケーションの文献は、コンピューターの無い診察室でプロバイダーと患者の間におこりうる様々なやり取りの問題を記録してきた。

⇒コンピューターの導入は診察時のやり取りを一層複雑にして、問題のあるものにすると想定するのは合理的である。

・ プライバシーや機密性
Federal Trade Commision’s Fair Information Practices guidelines
HIPPAA

Continuing Education
・ ウェブベースドの継続教育コース
多くがプロバイダーに自身のペースでコースを修了することを可能にし、中にはコースの終わりに 終了証をダウンロードできるようにしているものさえある。
“インターネットは高価な会議場や視聴覚教材の借用、旅費、施設やスタッフへの手数料を省き 非常に低価格で現在のCMEを提供する” (Whitten, Eastin, and, Coo, 2001)。
・ インターネットベースドの継続教育コースの種類や質はさまざまである(Kim, 1998) 



New Technologies and Provider-Patient Communication
On-Line Communication Technology and Provider-Patient Interaction
Physician Resistance
・ 医師はeメールやウェブベースドの媒体を使って患者と交流することにやや否定的である  (Podichetty & Penn, 2004)。
・ eメールには医師患者間のコミュニケーションを促進する力があるが、多くの医師は患者のプライバシーやヘルスケアに関する心理社会的要素(対面でなければ判断して伝えらえないもの)を提供する力の衰え、医療過誤による訴訟の増加といった理由から伝統的な医師患者間の境界線を越えたがらない(Bovi, 2003; Houston, Sands, Nash, & Ford, 2003; Roter et al., 2008)。

Advantages of On-Line Provider-Patient Communication
・ 患者の78%が、医師とのオンラインコミュニケーションを対面コミュニケーションより好んだ(Sutton & Walker, 2007)

⇒Eメールの持つ非同期性という本質が、患者が健康についての関心を尋ねたり、伝えたりする時にその考えをまとめる時間を与えるので、理解のある患者になれる(Strasser et al., 2002)。

・ 伝統的なプロバイダー患者関係は新技術を利用する可能性を低くする可能性がある。

Changes in Face-to-Face Provider-Patient Interaction Due to the Internet
・ 医師は多くの時間を患者がオンライン上で得てきた質問に答えることに費やしている(Sundar et  al., 2011)。
・ 患者は自分たちの健康状態に関する補完的な情報を持ったウェブサイトを医師から勧められたいと思っている(Diaz et al., 2005)。患者は医師がインターネットから得た情報についての質問に答えてくれたり、問題に取り組んでくれた時により満たされるようである。

Websites and Patient Access to Providers
・ 健康情報を提供するサイトへの商業目的のスポンサーがつくことへの懸念。
⇒健康に関するサイトによって歳入を増やすことは公衆衛生の向上より重要なのか?

Telemedicine and Patients
・ 交流の大部分はプライマリケア医と専門医によって行われていて、患者はほとんど参加していないという報告がある(Turner, 2003)。
・ 患者はテレメディシンによる交流に満足している(Whitten & Buis, 2008)とす一方、Miller(2003)はテレメディシンでは非言語的キューが減るので主観性の失われたプロバイダー患者間の交流になるとしている。

Managed Care Organization Efforts to Reach Patients Via the Internet
・ ケア管理組織の作るインタラクティブなサイト
消費者はそれによって自分にあった情報を得られが、ウェブ上の健康情報を強調する。
⇒実際のプロバイダーとのインタラクションには反している。

Witherspoon(2001)はHMOのサイトに専門家などへのeメールのリンクや掲示板、チャットルームが無いことを明らかにした。



New Technologies and Health Campaigns
Tailoring Health Messages
・ 特定の集団に対する特定のメッセージ
ヘルスキャンペーンにおいて、人は個人的に関係のある情報により関心を持ち、このことは態度や行動の変容をもたらす重要な一歩目である(Kreuter et al., 2000)。
・ Kreuterら(2000)はメッセージが個人の明確なニーズを反映する時、それはよく考えこまれて作られる。そしてElaboration likelihood model(Petty & Cacioppo, 1981)によると、継続した態度や行動の変容に重要な前提条件である。
・ プログラミングプロセスのために作られるアルゴリズムによってターゲットとなる人と特定のメッセージを素早く結びつけることで、コンピュータープログラムはテーラードメッセージの開発を可能にした。



ディスカッション
・コンピュータによる特定のメッセージの理解の助けとして米国のHHSが手掛けるhealthfinderの話
・健康サイトにスポンサーがつくことをどう捉えるか。実際の所、スポンサーがつかなければサイトを運営していくのは困難である。現在はスポンサーを公表するというのが決められているので、あとは読み手がどう読むか、専門家が中立的にそのサイトを評価できるか。
・ネット上での交流でなくeメールを使うことの意味。
・医師と患者のeメールコミュニケーションは実際には医師にとっては大きな手間となりうる。
・Elaboration likelihood model=精緻化見込みモデル
私たち消費者は広告の持つ説得(この商品を買わせようという説得)に対して2つの反応がある。1つが中心ルートと呼ばれる、その広告が持つ内容を正しく理解し、検討するという反応。もう1つ周辺ルートと呼ばれる、広告の内容より起用しているタレントなどによって影響される反応。


夏休み前半

7月に入って授業も終わり夏休みに入ったわけで研究を進めるには十分な時間を得たのに研究メモを全然残せていません。
決して遊びほうけているわけではないのですが...遊んでるけど

とりあえず、自分の頭を整理するためにも今日こそは書きます。

7月に入ってからは前回このブログでメモした文献を学部の時のゼミで紹介しました。
その結果学部生にうまく伝わらない。私の訳や、日本語がわかりにくかったり、発表の仕方が下手ということが大きな問題にあるのは確かですが、それは置いといて、自分が当然と思っている知識が相手には当然ではないということです。
専門家と一般の人のコミュニケーションでもその点はよく指摘されるところだと思います。
ただし、このことは重々承知していることだったので驚きはしないのですが、問題はその先にあって、私がみんなに分かるように伝えられないということです。
分かりやすく伝えようと思い、そして実際その通りに行ったつもりでしたが、後から感想を聞くと面白いし勉強になったという半面難しくて分からないとこも多かったとのことでした。
これならわかるだろうという勝手な判断があらためて危険なものであると体で感じられたことはすごくありがたい経験です。また他にも率直な意見を聞くことができたので感謝しています。


続いて、札幌で開かれた医療情報学会看護部会へ中山先生と参加してきました。
看護系の学会は初めてで、他とはまた違った雰囲気があり面白かったです。
がちがちの看護系の話はまだまだ私には理解する力が及ばなく、難しかったのですが看護教育でのeラーニングの方の話は、ゼミでもそのような話があるので聞きやすかったです。
ただし、そのようなテーマは学会内での注目度は低い感じがあるようです(笑)
学会の終盤では石垣靖子先生の「看護を語る―つながりが看護を変える」を聞きました。
非常に丁寧にお話をされる先生で非常に聞きやすく、時にはコクッと意識が飛ぶ瞬間もあったのですが、それでもつながりのお話を経験や、様々な言葉を使ってしていたので面白かったです。
中山先生もすごくよかったとおっしゃっていました。ただしデジタルとアナログという言葉の使い方には気になったようでその点も私は学ばせていただきました。


続いて、戻ってきてからはゼミの研究発表だったので、ブログに書いて学部生にも紹介した例の文献をゼミの研究でも発表しました。
学部生からの意見を参考により発展させた形で紹介しました。
私はソーシャルメディアの利用点とソーシャルメディアの重要点というところを、あまり区別なく紹介しましたが、そこの違いとなるoverarchの指摘にはなるほどと思い、前回の投稿も直しました。
また、紹介した文献がシステマティックレビューだったのですが、ゼミの終わりにそのレビューされている文献の一つに研究室の先輩と仲山先生の論文が含まれていることをその先輩が教えてくださり、感動しました。
その方は後日修士の頃の論文まで私に送ってくれて、今後の研究への参考にも、モチベーションにもなり感謝しています。


続いてPPの会(Positive Psychologyの会)での発表があり、
Handbbok of Positive Psychologyからsharing one's storyを同じM1の方と分担して発表しました。
トラウマに対するwritingやtalkingの重要性を述べています。
私の発表の主な点は抑制とと開示、認知的プロセス、社会的プロセスの三つの視点からwritingやtalking最終的にはpositive psychoogyについてです。
ディスカッションではいろんな話(ポジティブ感情とネガティブ感情は独立している、男性の感情抑制は意図的、ポジ:ネガ=3:7、ポジティブ感情単語とネガティブ感情単語がどの割合で用いられるべきか、writing研究にはポジテティブバージョンがあるetc)が聞けて大変参考になりました。


最後に昨日が研究会の輪読担当でしたので発表しました。
新技術のもたらす保健医療提供者間のコミュニケーションや提供者と患者間のコミュニケーション、ヘルスキャンペーンに関する話をしました。
この点は別項でまとめようと思います。
昨日は同じM1の方の研究テーマに関するお話もあったのでいろんなご指摘はわが身に置き換えて聞いていました。
その点も忘れないようにして自分のテーマを明確にしていきたいと思います。


他にも統計で様々な分析をして学んだりとありますがこの辺にしておいて、
今後はまた文献や研究についての備忘録を作成していきます。




2013年7月8日月曜日

ヘルスコミュニケーションにおけるソーシャルメディア


ヘルスコミュニケーションにおけるソーシャルメディアの有用性のメモです。
今回も文献からです。

A New Dimension of Health Care: Systematic Review of the Uses, Benefits, and Limitations of Social Media for Health Communication[1]

保健医療の分野でもソーシャルメディアに関する文献が欧米を中心に増えています(日本の文献は…)
そこで現状を理解するためにも一度システマティックレビューを読んで整理しときたいと思います。



以下、概要


ソーシャルメディアの利用は保健医療の現場を含み、世界中で増え続けている。

KaplanとHaenleinはソーシャルメディアを次のように定義する。

ソーシャルメディアとは、Web2.0の概念的、技術的基礎の上に構築されたインターネットアプリケーションの集合であり、ユーザー生成コンテンツの創造と交流を可能にするものである。

また、彼らはソーシャルメディアはメディア的要素と社会的要素の二つの構成要素に分類することができるとしている。
メディア的要素とは、どの程度対同時生のあるコミュニケーションを実施できるのか、どの程度曖昧性や不確実性を減らすのかということを含むものである。
社会的要素はGoffmanの自己呈示(self-presentation)に基づくものであり、人は交流の中で相手が自分に対して抱く印象をコントロールしようとする目的を持つというものである。

ソーシャルメディア(social media)とソーシャルネットワーク(social networking)は混同して使われることが多いが、実際には同じものではない。
ソーシャルメディアはメッセージの伝達を行うコミュニケーションチャンネルとして働き、ソーシャルネットワークは双方向で直接のコミュニケーションである。

個人的特性とソーシャルメディアの参加には関係性があることが認められている。
ジェンダーや年齢はその要因となりうる。

保健医療の場でのソーシャルメディアの利用はWHOのtwitter利用から医療現場まで多岐に渡る。

異なるソーシャルメディアプラットフォームの形態や機能の相違を探るために、Keitzmannらは “social media ecology”を提唱した。
これは様々なソーシャルメディアプラットフォームから構成され、保健医療提供などの組織に対して異なる影響をもたらす7つの構築ブロックからなるハニカム構造になっている。
構築ブロックは以下である。(ハニカム構造の詳しい説明はこちら

①同一性(identity):どの程度利用者が自分自身を顕にするか②会話(conversations):どの程度互いに交流するか③共有(sharing):どの程度コンテンツの交流するか④存在(presence):どの程度他者の利用を知っているか⑤関係性(relationships):どの程度互いに関わっているか⑥評判(reputation):どの程度他者の社会的地位やコンテンツについて把握しているか⑦集団(groups):どの程度コミュイティを形成しているか

このように、組織はソーシャルメディアの展望を認識し、理解した上でそれに適した戦略を立てる必要がある。同様に、 MangoldとFauldsは提供者とメッセージの消費者の関係性は変わってきていると強調した。このことは、オンラインヘルスコミュニケーションの妥当性と信頼性を維持するために提供者はある程度のコントロールを必要とするかもしれないということ示唆する。

現在、一般の人や患者、医療者や専門家におけるヘルスコミュニケーションに対するソーシャルメディアの利用やその利点、制限についての情報が不足している。
この論文の目的はその点と、先行研究に見られる現在のギャップを明らかにすることで今後の研究に指針を与えることである。これはソーシャルメディアがヘルスコミュニケーションの向上につながるかどうかを実証するためにも重要である。


PRISMAガイドラインに沿って98の文献を抽出した。
多くの研究はソーシャルメディアの中でもFacebookや、ブログ、Twitter、Youtubeの利用に関するものであり、トピックとしてはセクシュアルヘルスや糖尿病、インフルエンザ、メンタルヘルスがほとんどであった。

バイアスツール/質尺度の利用可能な方法論から、Downs and Black Instrumentが量的研究の質を評価するツールとして推奨されている。
質的研究に対する標準化された尺度は無いので、量的研究のみ(量と質のミックスを含む)評価した。
Downs and Black instrumentでは最高得点が32点になるが、本研究で対象となった研究の得点は3点から22点であった。全体的に得点が低かったのは、主に探索的研究と記述的研究が占め、介入研究が3つ、RCTが1つだったためである。
抽出した98の研究のうち40が量的、48が質的、10がミックスであった。


研究に見られるソーシャルメディア利用者は多岐にわたるが、年齢では11歳から34歳が多く報告されている。また、SNSは男性より女性が多く利用しているとする研究もある。
少数の研究が、ソーシャルメディアの利用者は所得が低いとしている。アメリカの研究では白人より黒人の方が利用していることを報告している。Chouらは人口集団は教育や人種/民族に関係なくソーシャルメディアにアクセスしていると結論づけている。


抽出した研究からヘルスコミュニケーションにおけるソーシャルメディア利用の主な7つ
・様々な症状に関する情報を提供すること
・医学的質問への答えを提供すること
・患者同士、患者と専門家の対話を促進すること
・患者の経験や意見に関するデータを集めること
・介入やヘルスプロモーション、健康教育に使われること
・スティグマを減らすこと
・オンライン相談を提供すること

ヘルスコミュニケーションにおけるソーシャルメディアに共通する(overarch)6つの利点
・他者との交流の増加
・より多く利用可能で、共有可能な自分に合った情報
・アクセシビリティの増加とアクセスの拡大
・ピア/社会的/情緒的サポート
・公衆衛生におけるサーベイランス
・健康政策への影響をもたらす可能性

ヘルスコミュニケーションにおけるソーシャルメディアの12の制限

・情報の信頼性の欠如
・情報の質の問題
・秘密性とプライバシーの欠如
・ネット上に個人情報を開示することへのリスク認識の不足
・不適切なアドバイスやコミュニケーションへのリスク
・情報過多
・自分の状況に合わせて適切に情報を利用できないこと
・特定のソーシャルメディアが他の物より行動変容により効果的かもしれない(?)
・健康に対する悪影響
・健康に対するリスク行動
・患者が専門家のもとへ訪れることを妨げるかもしれない
・専門家が患者との交流のために利用していないかもしれない

一般の人はソーシャルメディアを主に自分自身や、家族、友達のために利用し、健康問題に対する情報を得たり共有しようとする。患者は自身の経験を共有したり、オンライン相談に使うことができる。専門家の中には患者に関するデータを得たり、オンライン相談に応じるために利用する人もいる。
しかしながら、現段階での利用には制限がある。カナダの保健医療に関する女性専門家はWeb2.0が知識提供に有効的だろうと見ているが、扱う時間や技術的なスキル不足のために制限があるとしている。自己呈示や同時生の対面あるコミュニケーションへの親密性を向上させる今後の研究が専門家と患者のコミュニケーションを向上させるだろう。
他の研究では、オンラインの議論における専門家の知識共有行動を理解するためにソーシャルネットワーク分析を用いて、専門職間、組織間のつながりが強いことを明らかにした。
今後の技術発展は将来の保健医療の場でソーシャルメディアを利用する機会を増やす。だが、保健医療提供におけるソーシャルメディア利用の用途を最大にするためのトレーニングを患者にも提供者にも必要とする。


ヘルスコミュニケーションにおけるソーシャルメディアの役割を決めるためにも、より大きなサンプルサイズ、剛健な方法論が必要とされる。
ヘルスコミュニケーションに対するソーシャルメディアの研究の不足点と指針
・特定の集団におけるソーシャルメディアの影響
⇒十分なサンプルサイズを用いての評価が必要
・異なるソーシャルメディアアプリケーションの相対的な有効性
RCTを用いての評価が必要
・ソーシャルメディアの持つ有効性への長期的な影響
⇒縦断研究を用いての評価が必要
・ソーシャルメディア利用によるヘルスコミュニケーションの質と信頼性を観察し、
高めるために一番適した潜在的なメカニズム
  ⇒実際にソーシャルメディアを用いての調査が必要
・オンラインの情報共有リスク、秘密性とプライバシーに対する影響、秘密性とプラ
イバシーを維持したまま利用者を効果的に教育するために最も適したメカニズム
  ⇒メカニズムの発展と相まってリスクと影響の調査が必要
・患者と専門家の関係を効果的に支えるソーシャルメディアの潜在的可能性
⇒支えるためにどのように利用できるかを評価することが必要
・コミュニケーションを高めるためのピアトゥーピアサポートの影響

⇒ピアサポートの影響を評価することが必要


以上、こんな内容でしたが、、、訳が全然できません(苦笑)。
英語の勉強もしなければなりません。
間違っている、または分かりにくい場所については誰か教えていただけるとありがたいです。
あと、単に訳すよりはもう少し、重要と感じたとこにしぼって書いてみた方が振り返った時に分かりやすいかもしれません。

この文献からも、データベースで検索するだけでも分かるのですが、やはりRCTのような介入研究は多くありません。なぜでしょう。まだまだ新しい領域(実際に、今回レビューした文献もほとんどがここ2年間のものだったと記述がある)ので研究デザインなどが難しいのでしょうか。

保健医療でのソーシャルメディアの利用による知識共有、様々なものの見方、自分に必要な適切な情報の探し方、選択する力(まとめて言えばヘルスリテラシー?)が得られると感じていますが、その理想の仮説の前に(それを検証するためにも)もっと明らかにしなければいけないことが多くありそう、、、
とかいろいろ考えてるうちに煮詰まってきました(笑)。

システマティックレビューを読んで整理するはずだったんですが、まだまだ実際にどのような研究が行われているかを知らないので考えが現実的に進まないのでしょう。
やはり、この夏休みはどんどん論文を読んでいきます。



[1]Moorhead SA, Hazlett DE, Harrison L, Carroll JK, Irwin A, Hoving C

A New Dimension of Health Care: Systematic Review of the Uses, Benefits, and Limitations of Social Media for Health Communication. J Med Internet Res 2013 Apr; 15(4):e85