2013年8月22日木曜日

ヘルスリテラシー 尺度

前回、ヘルスリテラシーの定義に関するレビューを見たので、今回は尺度についてのメモです。
現在よく知られている尺度といえば、


  • TOFLA(Test of Functional Health Literacy in Adults)(Parker et al., 1995)
→実際に健康や医療に関する教材を用いて機能的ヘルスリテラシー(計算や読み)を測定する。
  • REALM(Rapid Estimate of Adult Literacy in Medicine)(Davis et al., 1993)
→リスト上の医療専門用語などの認知や発音を測定する。
  • NVS(Newest Vital Sign)(Weiss et al., 2005)
→アイスクリームのラベルを用いて、そこから読み取る情報の理解(正当性)について測定する。
  • HALS(Health Activities Literacy Scale)(Educational Testing Service, 2006)
  →健康に関する5領域(health promotion, health protection, disease prevention, health care 
        and maintenance, and systems navigation)における散文読解(Prose)、情報検索と利用
   (Document)、計算(Quantitative)を測定する。
  • NAAL(National Assessments of Adult Literacy Health literacy component)
→プリントや記述による健康情報に関するリテラシーを測定する。


などでしょうか。
今回はt最近出たヘルスリテラシー質問項目についての文献からのメモです。
文献

The grounded psychometric development and initial validation of theHealth Literacy Questionnaire (HLQ)[1]

を読んだのですが、尺度開発の文献なので概念や統計に関する様々な単語が使われており私にはまだまだ難しいですが…
尺度開発に関する日本の文献を読んでいればもう少し理解が進むのかなと思います。
しかし、読みながらいろいろ調べることで因子分析やSEMの勉強にもなりました。
ここでは、尺度の概要だけ載せます。



ほとんどの研究では、ヘルスリテラシーの定義の中で具体的にされた十分に広い概念を捉えられていない尺度を利用しており、また、それらは本質的な心理測定の弱みを持っていることが明らかにされている(Jordan, Osborne, & Buchbinder, 2010)(Jordan, Osborne, & Buchbinder, 2011)

この文献では上記のように包括的なヘルスリテラシー尺度が無いことを問題として、自分たちが開発したHealth Literacy Management Scale(HeLMS)(Jordan et al., 2013)に触れる。
だがこの尺度ではヘルスリテラシーがかなり低い場合には発見に使えるが、多少の低さでは使えず、加えて、最も分散を占めるケアに対する経済的障壁に関する尺度が、重要な尺度というよりは状況的な尺度であることを問題にあげている。

この課題に取り組むために、ヘルスリテラシーの包括的なモデルを開発し、
それを踏まえて新しい包括的な尺度Health Literacy Questionnaire(HLQ)を開発するというものです。

最終的なHLQの表を見ると45の質問項目を持つ9次元の尺度(9scales)からできています。


  1. 保健医療提供者からの理解と支持を得ていると感じること(4項目)
  2. 健康管理のための十分な情報を持っていること(4項目)
  3. 自主的な健康管理(5項目)
  4. 健康のためのソーシャルサポート(5項目)
  5. 健康情報を評価すること(5項目)
  6. 保健医療提供者との積極的な交流(5項目)
  7. 保健医療システムを利用すること(6項目)
  8. 適切な健康情報を探す能力(5項目)
  9. 何をすべきかが十分に分かるように健康情報を理解すること(5項目)
※私の勝手な訳です。

これらは個人の能力としてのヘルスリテラシーと、個人の能力を高めるための組織の能力が反映されているようです。

また、ナットビームの3つのヘルスリテラシーに合わせると、
機能的ヘルスリテラシーには上の9,2,8が、相互作用的ヘルスリテラシーには1,3,4,6,7,8が、批判的ヘルスリテラシーには5,3,4の質問項目が使えるようです。



この尺度は現状西洋向きに作られたようで日本にこのまま使えるかどうかは妥当性のところで不明ですが、非常に参考になると思います。
こう見るとヘルスリテラシーと一言で言っても本当に広い。
前回書いた定義に関する考察も自分の中でまとめていかないと今後の研究に落とし込めなくなってしまいますね…頑張ります。
そして今回の論文もなんとか読むので精いっぱいで中身にほとんど触れていませんが、今後はもう少し批判的な視点で読めればと思います。



[1]Osborne et al.: The grounded psychometric development and initial validation of the Health Literacy Questionnaire (HLQ). BMC Public Health 2013 13:658
論文はこちら





2013年8月9日金曜日

ヘルスリテラシー 定義

ヘルスリテラシーの定義に関するメモです。
Health literacy and public health: A systematic review and integration of definitions and models[1]



背景
ヘルスリテラシーという言葉は1970年代に使われ(Simonds, 1974)、公衆衛生や保健医療の場における重要性が増している。ヘルスリテラシーは、現代社会で人々が持つ健康に対する複雑な要求を満たすための能力である(Kickbusch & Magg, 2008)

以前は、ヘルスリテラシーは医療の場で言葉や数字を扱う力として強調されたが、近年になってその概念は健康情報を読むことや活用、健康の専門家に対するコミュニケーションニーズ、健康教育の理解のように、より複雑で相互につながりのある能力としてのヘルスリテラシーとして理解されるまで広がっている。

IOMのレポートではアメリカの成人のおよそ半分は健康情報を活用することに問題がありうるとされた。(IOM, 2004)。このことは“ヘルスリテラシーエピデミック”と言われている(Davis, 2004)

ヘルスリテラシーの研究や政策措置の増大に伴って、その概念に対する共通した定義が無いことが明らかになっている。
そのため、様々な国による研究から出たヘルスリテラシーに関する発見を比較することが非常に難しい。

そこでこの研究では定義とモデルについてレビューし、統合的な定義とヘルスリテラシーの最も包括的でエビデンスベースドの要因を捉えた概念モデルを開発する。


方法
・2009年秋と2010年春に2つの研究チームによるMedline, Pubmed, Web of scienceでのシステマティックレビュー
・リサーチクエスチョン
(1)どのようにヘルスリテラシーが定義されているか
(2)どのようにヘルスリテラシーが概念化できるか


結果
・ヘルスリテラシーの定義
ヘルスリテラシーの定義に特化して焦点を当てている19の文献から17の明確な定義を抽出した。
これらの定義のうち、AMA(1999)、IOM(2004)、WHO(1998)によるものが抽出した文献の中で最も頻繁に引用されている。

これらの定義が共有する特徴は、適切な意思決定をするために必要な健康情報やサービスを入手し、評価し、理解するための個人技術へ焦点を当ててているところである。
だが、最近のヘルスリテラシーの役割に関する議論では個人への焦点を超え、個人の技術と保健医療システムの相互作用としている。

この広い見方はZarcadoolas, Pleasant & Greer(2003)による定義の中で現れている。彼らは保健医療に関する教養がある人は健康の概念や情報を新しい状況に適応させ、健康や医療、科学的知識、文化的信念の対話に公共でもプライベートでも継続して参加できると述べている。

定義に関するコンテンツ分析は6つのクラスタを生んだ:(1)能力(competence, skills, abilities); (2)行動(actions);(3)情報と資源(information and resources);(4)目標(objective);(5)状況(context);(6)時間(time)

これらから、確認された17の定義の本質を捉える‘すべてを含む(all inclusive)’包括的な新しい定義を開発した。

Health literacy is linked to literacy and entails people's knowledge, motivation and competences to access, understand, appraise, and apply health information in order to make judgements and take decisions in everyday life concering healthcare, disease prevention and health promotion to maintain or improve quality of life during the life course.

ヘルスリテラシーはリテラシーと関連し、人生の道筋を辿る中で、生活の質の向上や維持を目的とした健康向上や疾病予防、保健医療に関する日常生活での意思決定や判断を行うための健康情報を人々が利用し、理解し、評価し、適応させる能力や動機、知識を伴う(訳 自分)。



健康情報を獲得し、理解し、評価し、活用するための知識、意欲、能力であり、それによって、日常生活におけるヘルスケア、疾病予防、ヘルスプロモーションについて判断したり意思決定をしたりして、生涯を通じて生活の質を維持・向上させることができるもの(中山先生による訳)。




・ヘルスリテラシーの概念
概観することで二つの問題が明白になった。
初めに、ヘルスリテラシーは多次元の概念であり、異なる構成要素から成る。次に、ほとんどの概念モデルはヘルスリテラシーの重要な構成要素を考慮するだけでなく、ヘルスリテラシーを健康アウトカムに結びつける道筋に加えて、個人のヘルスリテラシー水準に影響を与える個人レベルと集団レベルの要因を明らかにしている。

ヘルスリテラシーの次元
医療と公衆衛生におけるリテラシーの違いは異なる次元の識別において反映されている。

集団ヘルスリテラシーという見解の提案者は個人の能力や医療という文脈を超えた次元を含むためにその概念を拡大している。
その模範となるモデルがNutbeamのものであり(Nutbeam, 2000)、ヘルスリテラシーの3つの類型型の相違を見分ける。(1)機能的ヘルスリテラシー(Functional health literacy)は日常生活で効果的に機能するために必要な読み書きの基本的なスキルをである;(2)相互作用的ヘルスリテラシー(Interactive health literacy)はより高度な認知的、読み書きのスキルであり、社会的スキルとともに、日常的な活動に活発に参加し、様々な形式のコミュニケーションから情報を入手したり意味を引き出し、新しい情報を変化しつつある環境へ適用するために利用される;(3)批判的ヘルスリテラシー(Critical health literacy)はより高度な認知的スキルであり、社会的スキルとともに、情報を批判的に分析し、この情報を日常的な出来事や状況をよりコントロールするために使用することに適用される。
(参照:健康を決める力 ヘルスリテラシーの定義http://www.healthliteracy.jp/comm/post_7.html)
個人の健康管理から健康の社会的決定要因まで広がる広大な範囲をを持つ健康知識に従事するだけでなく、健康に関わる意思決定でのより良い個人的エンパワメントと自律性を次第に支援するスキルと知識の水準を異なる類型型が表している(Nutbeam, 2008)。

ヘルスリテラシーの重要な構成要素と考えられる要因の範囲は広大である。また、概念モデル間で広く違いがある。だが、この広く広がっている観点の多様性は2つの次元に減らすことができ、特に核となるヘルスリテラシーの質(基本的や機能的、相互作用的、臨床的ヘルスリテラシー)と、その適用の範囲や領域(保健医療の患者として、市場の消費者として、政界の市民として、メディアと関わる市民として)


前提
人口統計学的要因、心理社会的要因、文化的要因など

Nutbeam(2000)はヘルスリテラシーは教育や、社会的流動?(social mobilization)やアドボカシーのようなヘルスプロモーションの実施の結果であると指摘する。


結果
ヘルスリテラシーが健康状態自己記録の向上や保健医療コストの低下、健康知識の増加、入院の短期化、保健医療サービスの利用減少などをもたらす。

研究者らによるとヘルスリテラシーと健康アウトカムの関係は、単純な直線より、閾値効果を持った階段関数として考えなければならない。

Nutbeam(2000)はヘルスリテラシーによる個人的ベネフィットと、地域またはコミュニティベネフィットを区別している。
個人的ベネフィットの観点から、機能的ヘルスリテラシーはリスクや保健医療サービスに関する知識の増加、指示された行動の遵守をもたらす;相互作用的ヘルスリテラシーは自主的な行動力の向上、動機や自信の向上をもたらす;批判的ヘルスリテラシーは社会的不幸や経済的不幸に対するレジリエンスをもたらす。
コミュニティ、社会的ベネフィットの観点から、機能的ヘルスリテラシーは集団健康プログラムへの参加を増加させる;相互作用的ヘルスリテラシーは社会規範や社会集団との交流に影響を与える力を高める;批判的ヘルスリテラシーはコミュニティエンパワメントを向上させ健康の社会的、経済的要因を元にして行動する力を高める。


ヘルスリテラシーの統合概念モデル
文献の中でヘルスリテラシーの多くのモデルが示されてきたが、発展するヘルスリテラシーの定義とそれが意味する能力を並べるために十分に包括的とみなせるものは無い(Protheroe, 2009)。
これはおそらく、ヘルスリテラシーを概念化しようとする試みが今までヘルスリテラシーに関する様々な見方を取り巻く既存の知識を統合することに失敗してきたことによる。

そこで既存の概念モデルの主要な次元を包括したヘルスリテラシーの統合概念モデルを提示する。
Sorensenらによるヘルスリテラシーの統合概念モデル

3つのレベルの領域(Health care, Disease prevention, Health promotion)を持った健康情報の処理としての4次元(Access, Understand, Appraise, Apply)の組み合わせは、ヘルスリテラシーの12次元を持つマトリックスを生む。


考察/結果
重要なこととして、このモデルはヘルスリテラシーを高める介入の発展させる概念基礎として用いることで保健医療の実践や、疾病予防、ヘルスプロモーションを支援することができる。
さらに、測定ツール開発のための基礎として用いることでヘルスリテラシーに関する研究に貢献する。現在利用できるヘルスリテラシーの測定ツールは文献で議論されている概念の全ての側面を捉えてはいないので、公衆衛生に対するヘルスリテラシーの定義と付随する概念モデルを反映しているヘルスリテラシーを評価の新しい尺度開発が必要である。
概念の妥当性確認アプローチに従うことで、ここで呈示した概念モデルで描かれた次元評価のための尺度が開発可能である。
これは分野の最先端を反映し、社会研究のためや公衆衛生の実践において適用できる、ヘルスリテラシーの包括的な測定を生むでけでなく、その概念モデルを承認し、こうしてヘルスリテラシーの理解に貢献する。



一番重要な統合モデルに関する3領域×4次元は明快でわかりやすかったのですが細かいところがまだちゃんと理解できていません。もう少し深めて分かっていければ追記していきます。


[1]Sørensen et al.: Health literacy and public health: A systematic review and integration of definitions and models. BMC PublicHealth 2012 12:80.

2013年8月6日火曜日

Apomediation

前回触れたApomediationについてのメモです。
このApomediationはMedicine2.0の主要なテーマの一つとして論文(編集後記)

Medicine 2.0: Social Networking, Collaboration, Participation, Apomediation, and Openness[1]

で取り上げられています。



Apomediationとは学問上での議論の中で“Web2.0という言葉を避けるために創られた”社会技術論の用語である。それはユーザーが信頼・信用できる情報やサービスを認識するための3つ目の方法を描く。
1つ目に、仲介intermediaries(仲介者、ゲートキーパー)を使うこと。例えとしては、関連のある情報を提供する医療専門家や、専門家によって審査された情報だけを含むウェブポータルがある。

2つ目に、完全に仲介者を通さないこと。このことは普通、中間排除disintermediation言われる。例えば、ウェブ上で情報を探している患者や、旅行代理店を介さず飛行機の予約システム上で直接予約する旅行者である。

Web2.0時代に普及する3つ目の方法が中間排除の特別な形である:人々がゲートキーパーとしての伝統的な専門家や権威者にほとんど頼らずに、代わりにapomediariesから案内を受け取る情報探索戦略
仲介intermediaryとapomediaryの違いはintermediaryは情報と消費者の間“in between”に立ち、最初に情報を受け取るのには必要な存在であるということを意味し、結果としてそのintermediaryの質や信頼性は消費者が受け取る情報の質や信頼性によって決まる。
反対に、apomediationは消費者を何も必要とせず、仲介されている情報を変えたり選んだりするための限られた個々の力を持つ?質の高い情報やサービスに案内するためにそばに立つ“stand by”人やツールである。

人はapomedationとintermediationのモデルの間を行ったり来たりする。


保健医療の文脈では、disintermediationは消費者自身の健康データや一般的な医療情報へ自由に直接アクセスできることを意味する。

仲介者の伝統的役割は諸飛車を関連があり信用できる情報に案内することである。その仲介者を通さないことの主な問題は消費者が大量の情報を前に途方に暮れることや、誤っているまたは関連が無い情報を入手することである。Apomediation理論は“apomediaries”が部分的にintermediaryや、ユーザーに関連があり正確な情報を“push”または“guide”する役割を引き継ぐことができる。

Apomediation理論はユーザーや友人のようなapomediaryは付随的な信頼性のキューやメタ情報を提供しながら、デジタルメディアのネットワークによって与えられるたくさんの情報からユーザーの案内を手助けするとしている。例、アマゾンンの消費者によるレートなど。

The Dynamic Intermediation-Disintermiation-Apomediation model (DIDA) によれば消費者がapomediationまたはintermediationのどちらの環境を好むかはかなり状況次第であり、apomediationに対する消費者の好みを決める重要な変数は自律性や自己効力感、情報やサポートが求められる特定のエリアにおける知識である。
例えば、がん患者ははじめ情報ニーズを満たすためにintermediaryを好むかもしれないが、自律性、自己効力感、知識の増加に伴って、その患者は信頼のできる情報のために後になってWeb2.0アプローチを好むかもしれない。

apomediationは専門家にとっても重要であり、以前はブローカーを経た文献検索も今は自分で検索できる...以下省略



apomediationという言葉は2000年後半から文献上に出ていますが、日本では全く認知されていないので(そもそもMedicine2.0が...)日本語にしたらなんと言うのか難しいです。
しかし言わんとするところは分かりました(訳が?のところもあるのですが)。
ソーシャルメディアによって情報の流れが多様化しましたが、今回3つの方法という点で簡潔にまとめることができて頭の整理にもなったと思います。


[1]Medicine 2.0: Social Networking, Collaboration, Participation, Apomediation, and OpennessJ Med Internet Res 2008;10(3):e22


慢性疾患管理でのソーシャルメディア利用による健康アウトカムと関連のある効果

慢性疾患の自己管理という観点からソーシャルメディアを利用するという文献はちらほら見ますが、しっかりと読んだことが無かったのでその文献レビューを読んでみました。今回はそのメモです。
Health outcomes and related effects of using social media in chronicdisease management: A literature review and analysis of affordances[1]



背景
保健医療消費者は様々な健康情報を求めてインターネットに頼り、また、インターネットへのアクセスが可能であれば慢性疾患患者は状態を管理する健康情報資源のによってソーシャルメディアの恩恵を被るだろうとレポートで強く報告されている(Fox, 2011)。

患者中心や、個人に合った情報が主な面であり、それによって情報そのものではなく情報の共有が注目されている(Kamel & Wheeler, 2007)(Kaplan & Haenlein, 2010)(Boyd & Ellison, 2008)


レビューの目的
以下のエビデンスを評価する
・慢性疾患の管理にどのソーシャルメディアが利用されているか。
・どの慢性疾患(や人口統計学上)においてソーシャルメディアが利用されているか。
・どのようにソーシャルメディアが利用されているか。
・ソーシャルメディアの利用に関わる健康アウトカムやその他の効果は何であるか。
・これらの関連を決定するために使われている研究方法は何であるか。
・どのようにソーシャルメディアの特定のアフォーダンスが健康アウトカムやその他の効果と関わるのか。


結果
文献抽出(N=19) 
7つの主題内容分析(thematic content analysis)を用いた質的研究
3つのRCT
1つの無作為化縦断デザイン(randomized longitudinal design)
1つのシステマティックレビュー
7つのミックスメソッド

単独の慢性症状に着目しているもの(N=11)
5つのがん(内2は乳がんに特化したもの)
3つの状態に関連する慢性疼痛
1つのHIV/AID
1つの糖尿病
1つの関節リウマチ
その他複合的な症状などに着目しているもの(N=8)
複合的なものの中でも共通して報告されるものは1番に乳がん、2番に関節炎、3番に線維筋痛症


Web2.0より早くから存在していたものPredicessor(N=12)
OSG(Online Support Group)
OSGの利用は複数のカテゴリに当てはまる
ソーシャルサポート、情報の検索/洞察、情報/経験の交換、肯定的な意味の発見、比較/認識、他者の助け
OSG利用者はエンパワメントされた患者になる(van et al., 2008)(van et al., 2009)
利用者はかなり能動的にも受動的にもなりうる(Setoyama, Yamazaki, & Namayama, 2011)

SNS(N=5)
→サポートetc

Blogs(N=1)
がん患者にとってブログは感情のコントロール、問題解決、情報共有のために使われている(Chung & Kim, 2008)。

Vartual Worlds(N=1)
ヘルスケアへのアクセスが困難な人や、対面の場参加することが難しい人などのうつや慢性疾患に効果的な介入が可能。


このレビューで示された効果と健康アウトカムのカテゴリ
・参加(Engagement/participation)
・社会的交流(Social interactions)
・特定の疾患に関する知識への効果(Effect on disease-specific knowledge)
・心理的影響(Psychosocial impacts)
・身体状況への影響(Physical condition impacts)

参加
ウェブサイトへの積極的な参加が増えることと、実際の世界でのサポートに関するソーシャルネットワークが少ないことは正の相関がある(McLaughlin et al., 2012)。
オンライン介入に積極的に参加する利用者に影響を与える要因を調査する2011年のレビューで、統合的なソーシャルツールやソーシャルサポートは患者にとってより自分に合った介入として働くことが示された。このことが利用者の積極的な参加をもたらす(Schubart et al., 2011)。

社会的交流
・ピアサポート
・エンパワメント(ネットワークの構築、社会に対する受容と所属、理解と承認)
・情報共有

特定の疾患に関する知識への効果
特定の疾患に関する知識の向上は、慢性疼痛患者に対する相互作用のあるソーシャルサイトの概念デザインの中で最も強調されるものであり、それによって利用者は宣言的知識や事実に基づく知識を構築するために情報を求める。
このことは利用者が疾病管理の際に、情報を適応させることを可能にする(Schulz, 2009)

心理的影響
情緒的負担、不幸、痛みを引き起こす恐怖感、うつ、不安やストレスは、慢性疼痛患者に対するカスタムソーシャルネットワークサイトの介入を利用することで良くなると統計的に考えられている(Ruehlman, Karoly, & Enders, 2012)

身体状況への影響
普段の治療と比較して、オンラインの慢性疼痛管理プログラムを行っている人は痛みの激しさ、痛みに関連する干渉、知覚している障害が統計的に有意に向上した(Ruehlman, Karoly, & Enders, 2012)。
患者のニーズに対する個人に合った介入が実際の痛みや活動制限の向上をもたらす(Schulz, 2009)。


アフォーダンス
Identity
自己呈示(self-presentation)
匿名性の利点や欠点

flexibility
時間や場所を選ばない非同期性のコミュニケーション(asynchronous communication)

structure
apomediary”としてのソーシャルメディア=患者が状態の管理をするのに関連のある正確な情報に誘導すること(Hesse et al., 2011) ※apomediation
ソーシャルメディアによる誘導の促進という考えは様々なレベルで起こる。
慢性疾患の管理におけるソーシャルメディア利用は、自己誘導(ブログによる情緒的カタルシス)、ピアトゥピアの相互作用による促進、外部資源による誘導になりうる。
ある研究はピアトゥピアの相互作用と外部による促進(専門家の導入)を比較している(Klemm, 2012)

Narration
ブログを筆頭として特に情緒的サポートになる。

Adaptation
慢性疾患患者は症状や期間によってニーズが変わるのでその管理に多様性が必要である(van et al.,2008)。
HIV/AIDの初期段階では情報ニーズが高く、共有やネットワークの構築が重要である。しかしながらそれが進行すると情報ニーズが減り、ソーシャルメディアは関係性の強化やサポートのための役割が大きく増す。それゆえ、その役割はその時の患者のニーズに沿って変わる。患者は自分の状態と折り合いをつけると、ほとんど情報媒体には頼らなくなりソーシャルメディアの利用を止めることがある(Shigaki, 2008)


考察/結論
制限やアフォーダンスについて…詳しくは省略



apomediationという言葉はここで初めて知りました(Health2.0やMwdicin2.0の文脈ではよく取り上げられていたみたいですが気にしていなかったのでしょう...)。ソーシャルメディアによって情報の仲介者(専門家など)を持たないが、案内する場(友人など)が生まれたということ(?)だと思いますが、仲介者を持つことと持たないことによる情報の流れや質、利点、欠点などはしっかりと明らかにしておきたい所です。この部分については元の論文で確認しようと思います。


[1]Merolli M et al. Health outcomes and related effects of using social media in chronic disease management: A literature review and analysis of affordances. J Biomed Inform (2013), http://dx.doi.org/10.1016/j.jbi.2013.04.010

2013年8月2日金曜日

Web2.0と看護士の利用 行動科学

Web2.0と看護士に関する文献メモです。
私の興味のある対象は一般の人ですが、Web2.0の利用についてですし、そして私が看護情報学専攻ですし、ということで読んでみました。
Hospital-Based Nurses’ Perceptions of the Adoption of Web 2.0 Tools for Knowledge Sharing, Learning, Social Interaction and the Production of Collective[1]



・IntelligenceWeb2.0ツールがどのように看護領域で用いられるか、看護師によるWeb2.0の受容に対する行動の知覚を調査する。
・看護師の受容に対する意図に影響を与えている要因を明らかにするリサーチモデルを設計
・モデルに基づいて仮説と質問紙の設計
・データを収集し、要因を明らかにする。


どのようにWeb2.0ツールが看護師による知識共有、学習、社会的交流、集団的知性を支えるか。
・看護師はブログを使って、バーチャルコミュニティや社会的交流によって看護知識を得て、お互いに労働経験を学ぶことができる(Lau & Tsui, 2009)。

・看護師はwikiを使って協働的学習や内省的学習の経過を経験することができ、他の看護師から知識を得て、問題解決にその知識を適応させること
ができる。消費者のウィキ作成サイト面白そう
・Podcastで、看護師はRSSを使えばリアルタイムでの知識共有、最新情報の取得、学習を促進するために他者とインターネットのリソースを共有することができる。
いつでもどこでも看護学習や集団的知性の創造が行えるよう、RSSを使って、画像や音声またはビデオファイルで看護スキルや技術を他の看護師と共有や獲得することができる。
・看護師はウェブサイトや学習リソースを共有するためにタグ付けを行うことができる。
・看護師は知識共有や学習にソーシャルブックマークを使うことができ、無駄な検索を減らし、リソースの共有によってソーシャルラーニングを促進する。
・看護師はソーシャルネットワーキングソフトウェアを使って、自身のソーシャルコミュニティを築き維持することができ、それによって患者が行っているようにインターネット上で社会的交流や学習、集団的知性の創造を促進する(Chou et al., 2009)(Wicks et al., 2010)


人間行動モデル
合理的行動理論The theory of reasoned action (TRA)、計画的行動理論the theory of planned behavior (TPB) (Pawlak et al., 2008) 、技術受容モデル(仮)technology acceptance model (TAM) (Kim & Chang, 2007)は人の行動の受容に対する認知に関する研究でもっとも広く使われる人間行動モデルである(Davis, 1989)(Iacovou & Izak, 1995)(Benbast & Wang, 2005)

計画的行動理論の構造と基本的信念からhe decomposed theory of planned behavior (DTPB)(Taylor & Todd, 195)(Shin & Fang, 2004)(Lau & Kwork, 2004)を得た。
このモデルはTAMの利点も持つ。

このDTPBモデルに基づき、香港の看護士におけるWeb2.0の受容を研究するために新たな理論的枠組みを作った。

Web2.0の受容という利用行動は行動的意図によって決まり、大きな三つの決定要素―態度、主観的規範、行動制御感が行動的意図を決定するために使われた。

有効性の認知や利用しやすさの認知、相対的な利点、適合性はWeb2.0ツールへの態度を決める構成概念、上司による管理、病院の影響は主観的規範の構成概念、資源や技術を促進する環境は行動制御間の構成概念である。


このモデルに基づき仮説を立て、質問紙を開発した。


方法
・必要なサンプルサイズは377と計算
・病棟などで働く看護士1053に質問紙(6段階のリッカート尺度)を配布
・返ってきた392の内、不完全な回答である4つを除く388(37%)を分析
・ピアソンの相関係数rとt値の利用
・相関係数は2つの構成概念間の関係の強さを見るため、t値はその相関自体が偶然によるものかどうか判断するために利用

結論/考察
Web2.0の受容は客観的な決定ではなく、看護士にとっていかに有効で役に立つかによる。適合性も看護士の実際の行動を変容させるのに重要である。

多くの看護士は何らかのWeb2.0ツールを利用しており、利用しやすさの認知は重要でない。

同僚や病院は上司の管理より重要な影響を持つ。これはWeb2.0のコミュニティでは同僚無しには形成されないことによる。つまり同僚がWeb2.0のプラットフォーム上で活動していることは大きな影響を持つ。

だが、そこには知識共有のための患者のデータやプライバシーが起こりうるので、看護士の意思決定に重要な問題として病院の管理やガイドラインがある。

同僚の参加と病院の管理が看護士によるWeb2.0の受容に影響する主要な要因である。

利用行動は行動意図と有意に正の相関があり、行動意図は態度や主観的規範、行動制御間と正の相関を持つ。t値は態度、行動制御間、主観的規範の順に小さくなっていた。

政策立案者はこういったことを踏まえるべきである…



読んで見ると行動科学的な見地からの論文でした。
分析方法が相関とt値による有意性を見ていたが、多変量解析があってもよさそうな気がします(統計に関してまだ無知ですが...)。