2013年8月22日木曜日

ヘルスリテラシー 尺度

前回、ヘルスリテラシーの定義に関するレビューを見たので、今回は尺度についてのメモです。
現在よく知られている尺度といえば、


  • TOFLA(Test of Functional Health Literacy in Adults)(Parker et al., 1995)
→実際に健康や医療に関する教材を用いて機能的ヘルスリテラシー(計算や読み)を測定する。
  • REALM(Rapid Estimate of Adult Literacy in Medicine)(Davis et al., 1993)
→リスト上の医療専門用語などの認知や発音を測定する。
  • NVS(Newest Vital Sign)(Weiss et al., 2005)
→アイスクリームのラベルを用いて、そこから読み取る情報の理解(正当性)について測定する。
  • HALS(Health Activities Literacy Scale)(Educational Testing Service, 2006)
  →健康に関する5領域(health promotion, health protection, disease prevention, health care 
        and maintenance, and systems navigation)における散文読解(Prose)、情報検索と利用
   (Document)、計算(Quantitative)を測定する。
  • NAAL(National Assessments of Adult Literacy Health literacy component)
→プリントや記述による健康情報に関するリテラシーを測定する。


などでしょうか。
今回はt最近出たヘルスリテラシー質問項目についての文献からのメモです。
文献

The grounded psychometric development and initial validation of theHealth Literacy Questionnaire (HLQ)[1]

を読んだのですが、尺度開発の文献なので概念や統計に関する様々な単語が使われており私にはまだまだ難しいですが…
尺度開発に関する日本の文献を読んでいればもう少し理解が進むのかなと思います。
しかし、読みながらいろいろ調べることで因子分析やSEMの勉強にもなりました。
ここでは、尺度の概要だけ載せます。



ほとんどの研究では、ヘルスリテラシーの定義の中で具体的にされた十分に広い概念を捉えられていない尺度を利用しており、また、それらは本質的な心理測定の弱みを持っていることが明らかにされている(Jordan, Osborne, & Buchbinder, 2010)(Jordan, Osborne, & Buchbinder, 2011)

この文献では上記のように包括的なヘルスリテラシー尺度が無いことを問題として、自分たちが開発したHealth Literacy Management Scale(HeLMS)(Jordan et al., 2013)に触れる。
だがこの尺度ではヘルスリテラシーがかなり低い場合には発見に使えるが、多少の低さでは使えず、加えて、最も分散を占めるケアに対する経済的障壁に関する尺度が、重要な尺度というよりは状況的な尺度であることを問題にあげている。

この課題に取り組むために、ヘルスリテラシーの包括的なモデルを開発し、
それを踏まえて新しい包括的な尺度Health Literacy Questionnaire(HLQ)を開発するというものです。

最終的なHLQの表を見ると45の質問項目を持つ9次元の尺度(9scales)からできています。


  1. 保健医療提供者からの理解と支持を得ていると感じること(4項目)
  2. 健康管理のための十分な情報を持っていること(4項目)
  3. 自主的な健康管理(5項目)
  4. 健康のためのソーシャルサポート(5項目)
  5. 健康情報を評価すること(5項目)
  6. 保健医療提供者との積極的な交流(5項目)
  7. 保健医療システムを利用すること(6項目)
  8. 適切な健康情報を探す能力(5項目)
  9. 何をすべきかが十分に分かるように健康情報を理解すること(5項目)
※私の勝手な訳です。

これらは個人の能力としてのヘルスリテラシーと、個人の能力を高めるための組織の能力が反映されているようです。

また、ナットビームの3つのヘルスリテラシーに合わせると、
機能的ヘルスリテラシーには上の9,2,8が、相互作用的ヘルスリテラシーには1,3,4,6,7,8が、批判的ヘルスリテラシーには5,3,4の質問項目が使えるようです。



この尺度は現状西洋向きに作られたようで日本にこのまま使えるかどうかは妥当性のところで不明ですが、非常に参考になると思います。
こう見るとヘルスリテラシーと一言で言っても本当に広い。
前回書いた定義に関する考察も自分の中でまとめていかないと今後の研究に落とし込めなくなってしまいますね…頑張ります。
そして今回の論文もなんとか読むので精いっぱいで中身にほとんど触れていませんが、今後はもう少し批判的な視点で読めればと思います。



[1]Osborne et al.: The grounded psychometric development and initial validation of the Health Literacy Questionnaire (HLQ). BMC Public Health 2013 13:658
論文はこちら





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