2013年5月23日木曜日

ヘルスコミュニケーションと新技術①

5月15日水曜日のゼミで輪読の担当をしました。
今回はそのご紹介です。

書籍
『Health Communication in the 21st Century, Second edition』

輪読箇所
Chapter7 New Technologies and Health Communication


冒頭(p183)

ほとんどの保健医療供給システムに新しいコミュニケーション技術が広まっている。
この新しいコミュニケーション技術はヘルスコミュニケーション対して良い影響も悪い影響も与えうる。ヘルスコミュニケーションの専門家はそれを理解するべきであり、この章では現在の新しいコミュニケーション技術の方法や健康のアウトカム(結果)への潜在的な影響を見る。


インタネット上の健康情報(p184~)

インターネット上の健康情報を理解し利用できるということは、様々な方法で私たちの健康に影響を与える。
例えば、生活習慣や、疾病の早期発見、疾病への対処と管理、自主的な意思決定、様々な治療選択肢の理解、終末期における問題などである
Galarce,Ramanadkan,Viswanath(2011)

・利用について
オンライン上の情報は匿名でいつでもどこでもアクセスできるので、私たちが公にはしづらい慎重になる問題(性感染症など)を扱うときに役立つ。
診察室での医師との会話もより詳細に話ができるように患者に情報を与えることができる。
他にも様々な形で健康情報は利用されるが、私たちは健康情報を利用できるからと言って必ずしも健康のアウトカムが向上するような、一般に良いとされる行動をとるわけではない。

・信頼性について
政府や大学研究所などのプロバイダー(情報提供者)に加えて、私たち一般の人も様々な方法で情報の提供をおこなう。これらのネット上の情報の信頼性という問題は常にあり、研究者の研究対象にもなっている。
特に現在は情報の相互的なやり取りである、web2.0の成長が著しく、他人のブログ等から得られるじかの経験というものは、私たちの信頼という認知を強化するかもしれない。一方でブログは引用が多く、実際の情報をあまり含んでいないなどと問題にされている。

・デジタルディバイドやリテラシーの問題
デジタルディバイドやリテラシーが低いことによってネット上の情報が利用できない人の中には、その情報が得られれば多大な恩恵を授かるであろう健康にハイリスクな人たちが多い。
また、このデジタルディバドやリテラシーの問題は文化的な問題とも関わる。
文化的変数の重要な鍵とされるのはその人の持つ健康への信念、価値、規範、期待がある(Kreps & Kunimoto, 1994)


新技術と患者間のコミュニケーション(p189~)

インターネットの発達は患者間のコミュニケーションを促進させる。
代表例として、コンピューターを介したサポートグループ(Computer-Mediated Support Groups)
が挙げられている。
ここではsocial information processing theory(Ramirez, Walther, Burgoon, & Sunnafrank, 2002; Walther, 1996)が紹介されており、ネット上の情報の提供者は社会的に望ましいとされる人して振る舞い、情報の受け手はその提供者を自分にとって理想化するということである。このような関係のもとではフィードバックが繰り返される。この状態をhyper-personal interactionと呼ぶ(Walther, 1996)。
これはやり取りをする人同士の認知が変わることで、良好な働きをもたらす。
対面によるコミュニケーションが困難な時に、このコンピューターを介したhyper-personal interactionは望ましい。
当然ではあるが、デメリットとしては感情や表現の解釈の難しさ、不必要な情報や誤った情報などがある。


以上p191まで。


インターネットなどICTをコミュニケーションツールとする時はできることとできないこと、気をつけなければならないこと、といったことは常に意識されなければなりません。
今回の輪読箇所にはそのあたりについて基本的なことからずらっと書かれていました。ただし、アメリカの文献なので、日本にはまた違った視点があることを忘れないようにしなくてはいけませんね。
ゼミのディスカッションでもネット上のやり取りの日米の差は出ていました。

インターネットによるつながりを利用した私たちのヘルスリテラシーの向上に向けて引き続き勉強していきます。