2013年10月28日月曜日

第72回公衆衛生学会② 

前回に続き公衆衛生学会の参加報告メモです。
さすがは公衆衛生学会、本当に様々なテーマで発表、議論が行われていました。
多くのポスターやビッグデータに関する公演を見たのですが、ここではヘルスリテラシーに関わる所をメモしておきます。



直接ヘルスリテラシーが言及されることは無かったのですがシンポジウムの

   健康日本21(第2次)の新たな課題~健康格差の縮小を目指して~

は興味深く聞いておりました。これは健康日本21(第2次)の策定に関わった5名の方に、健康格差の縮小をテーマとして発表してもらうものです。

話の内容としては、
厚生省の河野先生は健康日本21(第2次)では健康寿命の延伸と健康格差の縮小が方針として示されたことに触れ、健康格差を地域格差の点からお話されていました。
国として、地域ごとの健康格差対策への取り組みのモニタリングが重要で、そして実態把握をすること、その背景の要因分析を進めることで今後の課題と対策を明確にしていくとのことでした。
藤田保健衛生大学の橋本先生はこのことに加えて健康寿命の点から具体的なお話をされていました。
続く3人の方も栄養、循環器疾患、口腔といった点から健康日本21の目標に向けたお話をされていました。この発表の中でいくつかの日本のコホート研究が取り上げられており、日本の大規模なコホート研究についてあまり知らなかったということを認識させられました。
疫学を勉強したのに具体的活動を知らないとはもったいないことです。
データを読むという意味でも調べて勉強する必要があると思います。
あとは、健康格差の話では避けて通れないであろう健康の社会的要因等が取り上げられていて面白かったです。

個人的にはヘルスリテラシーの話が出るかと期待もしていたのですが、その言葉は聞けませんでした(聞き逃しの可能性は否めないのですが…)。
ヘルスリテラシーは健康の維持や向上に重要な役割を果たし、健康格差の不確実な先行要因となりうると言われているように(Rudd, 2007; Lee et al., 2010, Paasche-Orlow et al., 2010)公衆衛生のゴールであり、健康の決定要因の一つとしての認知は高まっています。
もっとエビデンスが蓄積してくればこの場でも大々的に扱われるかもしれません。

ディスカッションの場では、地域格差に対して、地域は様々な特有の文化を反映しており簡単に是正できるものではないところがあるがどうするかというような鋭い指摘がありました。これに対してどのような答えだったか実はちゃんと覚えておらずメモしなかったことを後悔しているのですが、地域の特性も含めてまずは把握することが重要であるというような感じだった気がします(ごめんなさい、当てにしないでください)。


話は変わりまして、もう一つの話題をメインシンポジウムの

   変革期の公衆衛生学とヘルスコミュニケーション

からご紹介します。
座長の一人は日本のヘルスコミュニケーション領域でも有名な中山健夫先生です。私がまだ学部生の頃、大学院進学を考えている時に京都大学で一度お話させてもらったのですが、私のとりとめの無い話を非常に丁寧に話を聞いてくださったことを覚えています。中山先生もシンポジストの一人としてヘルスコミュニケーションについて分かりやすくお話しされていました。

このシンポジウムの話としては妊孕能や認知症についての具体的な話がありました。特に座長のもう一人である大東文化大学大学院の杉森先生は妊孕能に関するリテラシースケール(Cardiff Fertility Knowledge Scale : CFKS)とHLS14(後述)の相関を見るなど興味深い研究をされていました。また杉森先生はSorensen先生のヘルスリテラシーの統合概念モデルに触れるなど、私には非常に関心の高い所をお話されていました。具体的にTeachbackなどについても触れていました。

さて、先ほどのHLS14ですがこれは14-item health literacy scale for Japanese adultsのことです。
これは私が一番楽しみにしていたシンポジストである須賀万智先生らが開発したものです。
須賀先生はヘルスリテラシーについて丁寧に説明されていてとても分かりやすかったです。
説明の中でNutbeam先生によるヘルスリテラシーの分類を取り上げており、ヘルスリテラシーをリスクファクターとして捉えることによる入院などのアウトカムという考え方と、ヘルスリテラシーを資産として捉えることでヘルスリテラシーそのものがアウトカムになるという対峙を明確に述べていました。

私もこの点については文献を読んで勉強したつもりでしたが、先生のお話でスっと落ち込むような感じがありました。同じ文献を読んでいても吸収する度合いが全く違うのだろうなと痛感したのですが、これは私がもっと努力していくしかありません。

先生の話の後半はHLS-14についてです。
もともと日本でヘルスリテラシーの尺度として有名なものは石川先生らの開発した糖尿病患者のヘルスリテラシースケールがありました。しかし、患者ではない一般集団に対するより包括的な尺度開発のためにそれを発展させましました。
実際にHLS-14を用いて研究を行うと、HLの高い人の方が健康医療情報を収集する情報源が多かったり、治療上の意思決定にも主体的に参加したいと考えているということが明らかになったとのことです。

HLS-14は世界的に見ても様々な文献で取り上げられています。
尺度開発に興味が出ている私はHLS‐14についても勉強する必要があるなと感じました。
この尺度はどのように作られているのか、他の尺度との違いは何か。
私が研究を進めていく上でHLS-14が優れているものであればそれをお借りして研究することもできます。別に尺度を開発する必要があるのであればそれはなぜか、この点は明確に言語化できないといけないところでしょう。



以上が公衆衛生学会参加報告のメモでした。
自分の考えを見つめるのにも大変重要な機会となりました(学会に限らずその後のお酒の席もそうでした(笑))。
11月は研究会において研究の発表があるので進めていかなければなりませんし、いいモチベーションにもなりました。
ただし、心残りは発表をしなかったことです。
知人の方々が発表されている姿にはやはり刺激されます。
来年は発表したいです。というかします。
そうすると抄録の提出が5月位だったと思いますが時間が…頑張ります。

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