2013年11月21日木曜日

健康の社会的決定要因としてのヘルスリテラシー

昨日は研究会で研究発表の担当でした。
はじめに反省として、もっと研究について意識を持つこと。
なんとなく調べているだけだと「何をしてきたのか?」と問われた時に
答えられませんし、つまりそれは何もしてなかったということになります。

今年の研究会の最後の発表でも研究について発表しますので、(12月18日水曜日18時から聖路加看護大学で行われますのでご興味のある方はぜひご参加ください。)
この1ヶ月は頑張っていきたいと思います。
頑張るためのモチベーションは忘年会です。

昨日の私の発表はおそまつなものだったのですが、
先生のお話や、他のメンバーのディスカッションからヘルスリテラシーの現状について体系的に学ぶことができました。そこをメモしておきます。
私の理解に基づくので間違っているところや解釈を間違えているところもあるかもしれませんが…


ヘルスリテラシーという言葉が使われるようになってから多くの尺度が開発され利用されてきました。
特に最初の頃は医療におけるlow health literacy患者をスクリーニングする尺度(やテスト)が開発されてきました。
Nutbeam先生の言葉をお借りすれば[1]、
日常生活場面で効果的に機能するための読み書きの基本的なスキルである「機能的ヘルスリテラシー(functional literacy)」によってスクリーニングするものになると思います。

そして最近では医療場面重視のへルスリテラシーから、公衆衛生学的な面を重視したヘルスリテラシーへの関心が高まり、より包括的な尺度を開発しようとする流れがでてきました。

では公衆衛生学的な面を重視したヘルスリテラシーとは一体何でしょう。
これは、ヘルスリテラシーが個人の能力としての位置づけから、健康の社会的決定要因の一つとして言われるようになってきたことによります。
ヘルスリテラシーが健康の社会的決定要因であるならば、ヘルスリテラシーが低いということは自分の能力不足というよりはその周りの環境に原因があると捉えるということになります。
つまり、ヘルスリテラシーを測ることで、その人の環境を測ることができるということです。

最初の頃は、ヘルスリテラシーを測ることで、ヘルスリテラシーが低い人には何か介入を行いその人のヘルスリテラシーを上げようとするのが目的にされていましたが、(私もそのような研究ができればなと思いながら修士へ入学しました。)現在では、その人への介入よりも周りの環境への働きかけを重要とする動きがあります。もちろんその人への介入も重要なことに変わりは無いと思います。
こういった動きから公衆衛生学的な面を重視したヘルスリテラシーが叫ばれるようになり、実際に包括的な尺度を用いることで測ろうとしています。

ここでヘルスリテラシーをもっと簡単に言ってしまえば、
健康教育のためのツールというよりは、社会環境を整えるためのツールになるということです。
しかもヘルスリテラシーというのは他の社会的決定要因と比べたとき、例えば、貧困という問題を変えるというのは実際には難しい問題となっていますが、ヘルスリテラシーはもっと変えることができるものになっています。

また、高いヘルスリテラシーを持っているということは、私たちはその社会環境を整えるために働きかけることができるという力を持っているとも言えます。これはエンパワメメントとの目指すところでもあります。もう一度Nutbeam先生の言葉をお借りすれば、これはより高度な認知的スキルであり、社会的スキルとともに、情報を批判的に分析し、この情報を日常的な出来事や状況をよりコントロールするために使用することに適用される「批判的ヘルスリテラシー(critical literacy)」にあたります。を基にした、健康を決定している社会経済的な要因について知り、社会的政治的な活動ができる能力である批判的ヘルスリテラシーです。(8/11修正)
私たちはこの批判的ヘルスリテラシーを高めて行く必要があります。

ディスカッションではヘルスプロモーションという言葉が流行らなかったことによるヘルスリテラシーという言葉の代用や、政治的な問題についても話しました。
ヘルスプロモーションとヘルスリテラシーという言葉の問題では、“new wine in old bottles”(Tones, 2002)という言葉があるのを思い出しました。うまいですね。
また、ヘルスリテラシーという言葉にしては中身がでかすぎるのではという意見も出ましたが、ヘルスリテラシーはリテラシーとして自分が健康になるために最低限必要なものと考えるとなるほどと思います。

これは個人的に思ったのですが、ヘルスリテラシーを日本語にするなら何がいいのでしょうか…“健康を決める力”ですかね(単に健康を決める力というサイトを宣伝してみただけです(笑))。

最後に、話を現場レベルにすると、このヘルスリテラシーの働きかけをプライマリケアなどによって行っていく流れがあるそうです。また実際にイスラエルの国単位でも取り組みなどもあるようです。今後追っていきたいと思います。



とにかく私は研究を進める上でもヘルスリテラシーそのものを理解することが急務です。
どのような背景があるのかを知っているかというのは論文を読んだ時の理解にもかなり関わっていると思います。頑張ります。

[1]Nutbeam, D. : Health literacy as a public health goal: a challenge for contemporary health education and communication strategies into the 21st century. Health Promotion International, 15(3), 259-267, 2000.

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